厚生労働省は、うつ病などの気分障害の患者に対する「認知療法・認知行動療法」について、医師の指示の下、面接の一部分を知識や経験のある看護師が行った場合にも2016年度の診療報酬改定で新たに評価する方針だ。うつ病に効果があるとされる同療法の普及につなげるのが狙いで、11日の中央社会保険医療協議会(中医協)の総会で提案したところ、委員から反対意見はなかった。【坂本朝子】
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認知療法・認知行動療法は、うつ病などの精神疾患の背景にある物事を悪く考えたり自分を責めたりする考え方の偏りを修正し、問題解決を手助けする精神療法の一つ。10年度の診療報酬改定で保険点数化された。
現行制度では、入院中以外の患者に対し、認知療法・認知行動療法に習熟した医師が一連の治療計画を作成。患者に説明を行った上で計画に沿って治療を実施し、診療に要した時間が30分を超えた場合に限り保険適用となる。また、それら一連の業務は、すべて医師が行うこととされている。
しかし、同療法を実際に届け出ている医療機関は601にとどまり、普及があまり進んでいない。その理由として、医療機関から「実施する時間が取れない」「診療報酬上の実施が医師に限定されている」などの声があることから、厚労省は知識や経験のある看護師を活用する方法を提案した。
具体的には、初回の面接は医師が実施し、担当看護師が同席。その後、医師が治療計画を立案し、次回以降の面接の方向性や留意点などを担当看護師に指示。その指示を受け、2回目以降は担当看護師が30分超の面接を実施し、その後に続けて医師が5分超の面接で進捗を確認する。必要に応じ、医師は看護師に指示や指導を行う。最後の面接では、これまでの面接を振り返りながら医師が30分超の面接を実施。再発予防などについて確認し、指導を行う。こうして随所に看護師を活用することで、医師の負担軽減につなげる考えだ。
現在、認知療法・認知行動療法については国立精神・神経医療研究センターなどが多職種向けの研修会を実施しており、11年度から14年度までの受講者は3000人を超え、そのうち看護師や保健師は1088人に上るという。
厚労省の提案を受け、猪口雄二委員(全日本病院協会副会長)は、「今度、国家資格になることになった臨床心理士、もしくは既に国家資格の精神保健福祉士にも対象を広げた方がよいのでは」という意見を述べた。しかし、同省保険局の宮嵜雅則医療課長は、「医師の指示に基づく診療の補助の一環として、今回は看護師が参加することはどうかという提案をした」と述べ、対象の拡大については慎重に考えたいとした。
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