【京都府立医科大学大学院医学研究科精神機能病態学准教授 成本迅】
高齢化に伴って総合病院で認知症の方が身体疾患の治療を受ける機会が増えています。治療にあたっては、治療の危険性や予後を説明して本人の同意を得た上で治療を開始することが医療者に求められています。しかし、認知症で理解力や判断力が低下していると、本人が同意していてもどこまで理解しているのか分からなかったり、医療者が必要と考える治療を拒否されたりと、対応に苦労しているのが現状です。
そういったこともあって、医療者側は、ともすると家族にだけ説明し、家族の意見に従って治療を進めてしまいがちで、ご本人の希望が置き去りにされてしまうこともあります。また、身寄りのない患者さんの場合は、誰に相談してどのように治療を進めていけばよいか分からないため、考えうる限りすべての治療を行ったり、逆に治療を差し控えてしまったりするなど、施設ごとに対応がまちまちで混乱した状況になっています。
このような状況を少しでも改善するために、私たちは専門医以外でも患者さんの治療への同意能力の目安がつけられる方法を開発しました。治療方針を決定するにあたって、ご本人の意向をより反映できるようにするための研究を、科学技術振興機構の社会技術研究開発センターが設定した「コミュニティで創る新しい高齢社会のデザイン」研究領域(http://www.ristex.jp/korei/index.html)の助成を受けて行いました。
この研究は、花園大学社会福祉学部の小海宏之教授と中央大学法学部の小賀野晶一教授と共同で、主に京都で活動する医療福祉関係者や一般住民、認知症の人やその家族、後見人を受任している弁護士や司法書士といった法律家の協力を得て行ったものです。
次回配信は12月11日を予定しています
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