【東京メンタルヘルス所長 武藤清栄】
どこの職場でもメンタルヘルス対策には頭を痛めています。国は2000年8月、「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」を示し、職場におけるメンタルヘルス対策に乗り出しました。あれから15年、現状はいまだ厳しいものがあります。日本の自殺者数は1998年以降、年間3万人超という状態が続き、2012年にようやく3万人を切ったものの、「抑うつ障害群」や「双極性障害(躁うつ病)」などを中心に、精神障害者の数は増え続けています。この中には「持続性抑うつ障害(気分変調症)」「気分循環性障害」「双極Ⅱ型障害」などの新型うつと呼ばれるようなものも含まれています。
精神障害の補償状況を見ると、グラフ1に示すように労災請求件数も支給決定件数も増えていますが、中でも、介護・医療分野は請求件数、支給決定件数ともに目立って多いことが注目されます=表=。
介護や医療などのように、人間関係を中心にした仕事に携わっている人たちのストレスは高いと言われています。特に、介護の現場で働く人たちは、ほかの業種に比べて給与や福利厚生面で不利な立場にあるため、「職業として 自信が持てない」「社会的評価が低い」など、アイデンティティー確立に不安を感じる人が少なくありません。こうした勤務環境を背景に、メンタル不調に陥って離職する人も多く、介護事業主や管理監督者は、常に離職予防やスタッフの定着に考えを巡らせざるを得ないのが実情です。
離職とも密接にかかわる職場のメンタルヘルス対策。これに取り組むべきは、言うまでもなく事業主です。この連載では、事業主や管理監督者の立場で、さまざまな事例に触れていきたいと思います。
次回配信は8月18日5:00を予定しています
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