【株式会社MMオフィス代表取締役 工藤高】
政府の「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会」は6月15日、将来の需要推計に基づく2025年の必要病床数が、現状から最大20万床減少するという報告を行った。当日中にキャリアブレインが記事にしていたほか、医療系ニュースはもちろん、NHKや日経、読売、朝日、毎日等の日刊紙でも大きく報じた。地方紙では、その都道府県にフォーカスした内容で「○○県はXX床削減」との見出しが出ていた。
具体的には熊本日日新聞「県内病床 3割以上削減を」、静岡新聞「本県は7500床削減」といったセンセーショナルな見出しであった。「全国で20万床削減」という数字にインパクトが強過ぎたせいであろう。新聞報道などでは「全国での数字の足し上げには意味がない」「乱暴過ぎる」といったコメントを紹介することで、「政府」対「医療現場」という対立構造を浮き立たせ、これから厳しい時代に突入することをマッチポンプ的にあおっているようにも読める紙面もあった。
今回は、4年前に示された社会保障・税一体改革の「医療・介護に係る長期推計」(11年6月公表)の改革シナリオで示された必要ベッド数(131万床)と、今回の第1次報告(案)の114.9万床(パターンA)では、なぜ数値に乖離が生じたのか考えてみよう。
■ なぜ社会保障・税一体改革の改革シナリオとの差が生じたのか
11年に示された社会保障・税一体改革の長期推計の資料=図1、2=を見直してみよう。この図は現在の病床再編成の基本となった考えを示したもので、一般病床の医療機能分化を図り、適正病床数を検討していた。厚生労働省担当者やコンサルタントが現在でもセミナー等で使用する「バイブル的」な図と言えよう。この資料によると、11年度時点のベッド数は一般病床107万床、長期療養(慢性期)23万床の計130万床程度だった。そして、現状のサービス提供体制を前提とした現状投影シナリオを25年度に当てはめた場合、一般病床129万床、長期療養34万床、合計で163万床になると見込まれていた。これに対し、サービス提供体制について選択と集中等による改革を進める改革シナリオでは、高度急性期22万床、一般急性期46万床、亜急性期等35万床、長期療養28万床、合計で131万床とされていた。
図1 将来像に向けての医療・介護機能再編の方向性イメージ
第24回社会保障審議会医療部会 病床区分の見直しについての参考資料(図2も同じ)
図2 医療・介護サービスの需要と供給(必要ベッド数)の見込み
次回配信は7月8日5:00を予定しております
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