【岐阜大医学部附属病院 薬剤部副部長 鈴木昭夫】
私たち岐阜大医学部附属病院で取り組んだ病棟薬剤業務のアウトカム評価について、前回(「“薬剤師の効果”をデータで示す」)、処方介入によって有害事象を改善・予防することが入院期間の長期化を抑制することにつながると記載しました。これらの取り組みをもう一つ、別の指標から考えてみましょう。「病棟薬剤師は医療経済や病院経営にどのようなインパクトがあるのか」という点です。当院の耳鼻咽喉科をモデルとして2012-13年に行った、病棟薬剤師による処方介入の医療経済効果についての試算をご紹介します。
当院耳鼻咽喉科の1日当たりの入院単価は12年当時、約5万4000円で、そのうちDPC分は48% (約2万6000 円)でした。グレード2(中等度)以上の有害事象を発現していた入院患者135人中、処方介入によって症状が改善した患者は88人(65%)です= グラフ1 =。症状が改善した患者は改善しなかった患者に比べ、入院期間が平均13.6日短かったことから、入院期間の短縮に伴う医療費節減額は、年間約3100万円(2万6000円 x 13.6日間 x 88人)と推察することができます。
さらに、既述したように、放射線療法・放射線化学療法が行われた頭頚部癌患者86人に対してポラプレジンクのアルギン酸ナトリウム懸濁液(P-AG)を予防投与した場合に、グレード2以上の口内炎を予防できたと推察される患者数は50人でした。一方、グレード2以上の有害事象が初めから起きなかった患者の入院期間は、発現した患者より19.7日短縮していたことから、口内炎予防に伴う医療費節減効果は年間約2560万円(2万6000円 x 19.7日 x 50人)と推測されます。
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