【佐賀大理事・副学長 宮﨑耕治】
現代の医療が診療報酬制度に準拠して保険機構から診療報酬が支払われる仕組みである以上、一般的には規則にのっとった医療を効率的に行い、質の高い医療を提供すれば、経営の質は保証される。前回述べたようなインセンティブをヒト・モノ・カネで還元するためには、まず経営を改善し、原資を生み出す必要がある。
1つは、2003年から特定機能病院に導入された包括評価制度(DPC;Diagnosis Procedure Combination制度)で、それまでの診療報酬の増加が増収であった出来高払い制度と異なり、診療報酬の増加が必ずしも増収とはならず、原価管理によって収益性が管理されることとなった。従って、常にコストを考慮した診療が必要となり、例えば高度医療を伴わない長期入院は収益を生まない。
佐賀大病院ではこのような認識の下、各診療科がそれぞれを専門病院としたテナントに見立て、看護部は人材派遣会社、手術部や病棟は手術室やベッドの貸し出し会社、事務、検査部、薬剤部はアウトソーシング会社などとしてコストを算出、診療科別に収益を管理できる独自の管理会計解析システムを09年に導入した。
もう1つは、10年度からの診療報酬で急性期医療がプラス改定されたのを受け、多くの高度急性期病院が黒字転換を図ることができたことだ。それは高度急性期医療を担う手技料を伴う、主に外科系診療科の貢献が大きい。しかし、これらの診療科では既に過重労働が指摘されており、現場への還元が推奨されたものの、実行に移した病院はほとんどなかったと思われる。
国立大病院では法人化後も医師は教育職であるため、国公私立病院の中で最も年収は低く、時間給に換算すれば、国際的にも最低に近い。その代償として、一定の兼業が認められてはいるが、外科系などの多忙な部門ではその時間もままならず、そのために志望者は年々減少している。
次回の記事配信は、2月23日5:00を予定しています
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