【西岡税理士事務所 西岡篤志】
税務調査官は、短い調査日程の中で、既に提出された申告書とその添付書類だけでは把握できない情報をいかに効率的に入手し、申告内容に「非違」(ひい:申告漏れや処理の誤り)がないかを見つけ出す高度な調査テクニックを持っている。その中で最も基本的なものが「質問」のテクニックだ。取引内容が明らかでないこと、不正な経理処理の疑いのあることなどを納税者やその関係者に質問し、説明や回答にあいまいな点がないかで見極めるのである。
税務調査で行われる院長先生に対するヒアリングでは、開業からの経緯、診療内容や特徴、診察から会計までの流れ、そのほか人付き合いや趣味の話まで、まるで世間話のように院長先生が話しやすい状況をつくりながら、税務調査官はあらかじめ準備し、チェックしたいポイントに探りを入れる。この時、質問に対する答えの内容だけでなく、答える時の態度や話しぶりも観察し、説明の妥当性や信ぴょう性の判断材料にしている。
しかし、税務調査においては、「質問」に対する「答え」だけでは証拠能力として不十分である。そこで、税務調査においてチェックする帳簿や請求書・領収書などの資料と、確定申告の際に添付した書類や取引先の税務調査などで入手した書類などを相互に突き合わせて、これらの妥当性を検証する「突合」も行われる。この「質問」と「突合」の組み合わせで、申告内容の非違を発見するのである。
次回配信は11月10日5:00を予定しています
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