【国立がん研究センター東病院 精神腫瘍科長 小川朝生】
前回まで、主に急性期病院における認知症ケアについて現状や課題を整理してきた。今回は、認知症と関連付けられることの多いせん妄について考えてみたい。
【症例:70歳代男性(入院前の認知症の症状はなし)】
2か月前より背部痛があり、総合病院内科を受診したところ、腹部CTにて膵頭部腫瘍を疑われ、精査目的で入院となった。入院3日後より、不眠・昼夜逆転が出現。日中うつらうつらと眠り、夜になると落ち着かずに興奮し、「会社に行く」などの見当識障害を疑う行動が見られた。担当医は不眠と判断し、ベンゾジアゼピン系睡眠導入薬を処方したが、昼夜のリズムは回復せず、日中はうつらうつらとする日が続いた。食事摂取も進まな かった。
入院7日目に心肺停止状態で発見。蘇生処置を試み、一時的に回復したが、3日後に死亡した。CTにて肺塞栓を認めたほか、蘇生中の血液検査からは脱水が認められた。
入院前後からの脱水と引き続くせん妄の結果、食事摂取がさらに落ち、せん妄が遷延したことが疑われた。
次回配信は9月25日15:00を予定しています
(残り2031字 / 全2523字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】