【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長 、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
2012年度診療報酬改定で新設された基礎係数では医療機関群ごとの係数設定が行われ、当時、大学病院本院をI群、大学病院本院に準ずる高診療密度を有する高機能急性期病院をII群、その他をIII群とする分類が行われた。これは、DPC/PDPSが開始された当初に前年度並みの収入を保証する調整係数の置き換えの中で登場したものであるが、資料にあるように大学病院本院の最低値(明らかな外れ値を除く)を超えることが実績要件における基準値とされたこともあり、II群は大学病院本院並みの医療を提供する機能を有し、しかも基礎係数で高く評価されるのであるから、多くの高度急性期病院はII群を目指していた。
12年度のII群病院の数は全国で90病院と特定機能病院数とほぼ同じであり、「選ばれし病院」という色彩が強かった=グラフ1=。しかし、暫定調整係数が廃止された18年度には150病院を超え、それなりの機能を持つ病院はII群(DPC特定病院群)に昇格した印象があった。さらに、コロナ禍の評価であった22年度は181病院となり、大病院の多くがDPC特定病院群となり、もはやプライドの面でDPC特定病院群を維持する必要性はなくなった。
DPC特定病院群は、基礎係数が高いのだから経済的にも有利だと指摘されることもあるが、基礎係数そのものがじわじわと減少してきている=グラフ1=。
これは、医療機関群ごとの医療資源投入量が反映されたものであるので、DPC/PDPSが開始されて20年以上が経過し、標準化と効率化が進んだ結果だと予想する。なお、医療機関群が始まった12年度と、24年度の基礎係数の増減率を医療機関群ごとに見ると、大学病院本院の減少率が最も高く、DPC標準病院群では微増となっている=グラフ2=。
これは国が恣意的な予算の配分をしたわけではなく、基礎係数が包括範囲に係る出来高報酬相当の平均値である診療密度を係数化したものであり、損失補填的な性格を有していることに起因することが関係している。大学病院本院の基礎係数の下落率が最も高いのは標準化が進み医療資源投入量が減少したことを意味する。一方、DPC標準病院群は改定年ごとに新規のDPC対象病院の存在により診療密度が
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