【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長 、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
連載第220回では2022年度の診療実績を19年度と比較し、大学病院本院で一般病棟への入院患者数が減り、全国では微増の全身麻酔件数が大学病院本院で減少する一方で、救急車搬送入院件数が増えていることを明らかにした。全国では救急医療入院以外の予定外入院が4割減少しているわけだが、4分の3が予定入院である大学病院本院でも苦戦しており、救急医療に注力する様子がうかがえた。
本稿では、予定入院が中心となるがん専門病院の診療実績を検証し、これからのがん専門病院の在り方について私見を交えて論じる。
グラフ1は、厚生労働省が3年に1回実施する患者調査で示された入院患者の受療率であり、がん患者は頭打ちの傾向にあるものの外来化が進み全体としては増加傾向にある=グラフ2=。
ただし、部位別に見ると胃や肝、管内胆管の悪性腫瘍のように入院受療率が激減している疾患もあれば、大腸がんや肺がんのようにほぼ変わらない領域も存在する=グラフ3・4=。
これらは、在院日数の短縮や手術の低侵襲化、外来化などの影響を受けており、その影響の程度も疾患によって異なるかもしれないが、受療率の変わらない疾患は発症が増えていることになる。なお、外来については全体的に増加傾向にあるが、胃の悪性腫瘍と血液および造血器の疾患並びに免疫機構の障害の受療率は低下し続けている=グラフ5・6=。
このような違いはあるが、がん専門病院であれば、総合的な診療体制を有しているのであろうし、救急患者が少ない診療特性から全体としてコロナによる患者数減少の影響は少ない可能性もある。
グラフ7は、
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次回配信は7月8日を予定しています
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