【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長 、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
連載第212回で病院報告のデータを基にコロナ前後の人口当たり在院患者数や外来患者数について取り上げ、多くの地域では2019年度から患者数が減少していることを紹介した。本稿では厚生労働省がまとめた「令和4年度DPC導入の影響評価に係る調査『退院患者調査』の結果報告について」を用いて患者数の変化の要因を検証する。なお、コロナ前を19年度と考えるため、20、21、22年度の出来高算定病院のデータは除外し、地域や病院機能別の実態に迫っていく。
グラフ1は全国の診療実績を年度ごとに見たものであり、退院患者数は19年度と22年度を比較すると12%減少している。ただし、全身麻酔件数はわずかだが増え、救急車搬送入院や救急医療入院のような重症な救急患者の減少はそれほどでもない。しかしながら、救急医療入院以外の予定外入院の減少は続き、コロナ前よりも40%以上減ったことになる。
これを病床規模別に見ると、400床以上ではコロナ前と比較し、順調に患者数を戻しているが、中小病院は厳しい状況に置かれていることが分かる=表=。
救急医療入院以外の予定外入院はどの病床規模でも40%程度減少しているが、救急入院への依存度が高い中小病院ほど影響が大きく、重症、あるいは救急車搬送入院などは中核病院に集約が進みつつあることを意味するのかもしれない。
人口当たりの急性期退院患者数を見たものがグラフ2であり、いずれの地域も患者数は戻っていないが、全身麻酔件数や救急車搬送入院はコロナ前を超えている地域もある=グラフ3・4=。
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次回配信は6月10日を予定しています
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