【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長 、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
連載第181回「働き方改革でICUが維持できなくなる」では、働き方改革を踏まえ、今後、「常時配置」の要件などがあるICUについては減少する可能性が高く、HCUへの変更や重症系ユニット再編の必要性、さらに「常時配置できない場合の点数設定」と「Tele-ICU の整備や診療報酬の評価」が必要なことに言及した。
さらに、「医療白書2023年度版」(日本医療企画)では、「働き方改革に関連する診療報酬の論点」として集中治療機能を取り上げ、「宿日直許可を得ているICUについて、『当面の間は』常時配置の要件を満たしており、特定入院料を算定して問題ないとされているが、今後何らか差がつく方向で議論が進む可能性」があること、さらに「ICUでも消化器等の悪性腫瘍手術後の患者を観察目的のために入室させれば比較的状態は落ち着いていることも多い。そのようなICUと宿日直許可を受けていない状態不安定な患者を診ている治療室の点数に差がつくことは自然な流れだろう。私見だがここにSOFAスコアを用いてはどうだろうか」と提案をした。
24年度診療報酬改定はほぼこれに近くなり、今後、急性期病院にとって集中治療機能をどう考えるかは非常に重要な論点となる。
資料1は24年度診療報酬改定後の特定集中治療室管理料の施設基準と点数だ。新設の特定集中治療室管理料5と6には、SOFAスコアの基準がない。医師配置要件は宿日直許可ではない医師を治療室に常時配置するのではなく、常時院内にいればよい、ことになったので緩い設定といえる。一方で、その医師のマンパワーを補うために、専門性の高い看護師の配置と、上位施設と連携した遠隔ICUモニタリングによる新たな評価が行われることとなった。
医師配置が緩くなったので、ハイケアユニットからICUに変更する病院が出てくる可能性もあるからか、施設基準「1床当たり15平方メートル」が改めて明記された。ハイケアユニットは4対1の看護師配置(管理料1の場合)で、ICUは2対1だから、そもそもマンパワーの投入度合いは異なるが、稼働率が低いハイケアユニットには実質2対1並みの配置であることも少なくなく、やはり常時医師配置の施設基準の縛りが大きい。
資料2は24年度診療報酬改定後のハイケアユニット用の「重症度、医療・看護必要度」だ。基準(1)と基準(2)に分かれ、大きな変更が加えられた。基準(2)は厳しい印象はないが、基準(1)が現状のままだと満たせないという施設は多い。ICUとHCUの大きな違いは、「動脈圧の測定」がICUで行われているのに対して、HCUではなくても基準を満たせる点が大きく異なってきたわけだ。
ところが、HCU用の基準(1)に「動脈圧の測定」が入っておらず、術後患者を中心に入室させるHCUでは運用を見直さなければならなくなるかもしれない。手術室でAラインを抜かずに、HCUまで留置してくるという運用では基準をクリアできなくなる。ハイケアユニット入院医療管理料については、全体の95%が管理料1で、バランスが悪い。基準(2)で差を付けることにより、管理料2に誘導することが自然かと考えたが、より高いハードルが課された印象だ。
この改定から、特定集中治療室管理料5と6にICUとしての未来はないことが明示されたと感じる。ICUは宿日直許可がない状態で不安定な患者が入室する治療室であるから、宿日直許可のない医師が常時配置され、SOFAスコアが求められる(いずれSOFAスコアの基準も上がっていくだろう)。
次回以降の改定の議論で、
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次回配信は4月22日を予定しています
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