【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長 、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
2024年度診療報酬改定において入院医療には大きな変更が加えられ、いずれの機能においてもより重症な患者を入院させるべきという、あるべきルールが示される結果となった。今回改定は、地域医療構想を実現するための診療報酬との関係、そして高齢者救急の受け手が争点となったと考える。
本稿では、14年度診療報酬改定で評価された地域包括ケア病棟について、特にDPC病院が当該病棟を有することの意義についていま一度考えていく。 (残り2040字 / 全3519字) 次回配信は3月25日を予定しています
今回改定において、地域包括ケア病棟では、高齢者救急の受け皿として入院初期の加算が引き上げられた。これは、誰しも否定しないと思うが、現実的に13対1を前提とした当該病棟で救急が受けられるかは一貫して指摘されてきた論点だ。一方で、60日までフラットな点数設定であったものが、40日以降が減算され、特に療養病棟から参入するケースで影響が出るかもしれない。ただ、極めつけは、短期滞在手術等基本料を算定する疾患について、自宅からの入棟割合及び在宅復帰率の計算から除外されることとなったことだ。連載第206回でも取り上げたが、白内障やポリペクでこれらの数値をクリアしてきた病院にとっては激震が走る改定だったと言えるだろう。
20年度診療報酬改定で400床以上の病院について院内転棟が6割未満でないと1割の減算、22年度診療報酬改定において200床以上の病院について院内転棟が6割未満でないと1.5割の減算と対象が拡大され、さらに在宅復帰率の基準も72.5%に設定された。院内転棟を回避するのに一番都合がよいのが、自宅から来て、在宅復帰する短期滞在手術であり、これが大流行したという背景がある。
グラフは、病床規模別・DPC参加有無別の地域包括ケア病棟における院内転棟割合を見たものであり、DPC病院、特に200床以上の病院において高い水準となる。
一般的にDPC算定病棟の入院初期の診療単価は高く、しかも手厚い看護師配置であるため、DPC算定病棟で入院初期は患者の受入れを行う運用がスムーズである。だからこそ、状態が落ち着いた患者について、入院期間IIをめどに院内転棟させる運用をさせてきたのだろう。これは、20年度診療報酬改定における点数設定も密接に関係する。ただ、院内転棟について度が過ぎるといけないというルールに変更されたことが、短期滞在手術を地域包括ケア病棟に入棟させる運用に拍車をかけた。自宅からの直接入院の患者を受け入れるのだとすれば、短期滞在手術は点数設定なども含め魅力的であり、施設基準をクリアするために絶好の機会である一方で、そこには矛盾もはらんでいたわけだ。
ここで、地域包括ケア病棟(入院医療管理料を含む)の病棟構成を見たものが、表であり、急性期一般入院料を届け出る病院が全体の72%を占めている。
最も多いのが、急性期一般入院料2-7のいわゆる10対1であり、このうち79%はDPC参加病院以外の出来高算定病院となる。これらの一定数は、地域包括医療病棟入院料に転換することが期待される。それ以外で、出来高病院が急性期病院として生き残る道は困難なように私は感じている(連載第97回参照)。一方で、7対1看護師配置を前提とする急性期一般入院料1については、そのうちの87%がDPC参加病院であり、これらの病院において地域包括ケア病棟の扱いは難しい。今回改定で、地域包括ケア病棟を有する意義が消失する病院も多いのではないだろうか。
高齢者救急等を受け入れるのであれば、
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