【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長 、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
2024年度診療報酬改定に向けては、高齢者救急が議論の争点の1つとなっており、7対1看護師配置のような手厚い病棟よりも地域包括ケア病棟が適するのではないかという意見も提示されている。一方で病院団体からは物価高騰などを受けて入院基本料などの引き上げが要望されており、ある意味当然で合理的な主張だともいえる。ただ、財源の制約がある中では、どこかを減らさなければ、適切な配分が行えない可能性もある。「適切な入院医療」の評価は患者の状態に加え、医師の判断も影響するわけで一律の線引きは難しい。ただ、外来化の流れは着実に進んでおり、私は一部の手術について外来化を積極的に進めることが望ましいと考えている(連載第145回)。本稿ではDPC参加病院で上位の症例数を占める短期滞在手術の実態をデータに基づき整理した上で、今後の在り方について私見を交えて論じる。
表1・2は、全国のDPC参加病院の退院患者のトップ30の診断群分類を見たものであり、上位の疾患に18年度と21年度で大きな順位の変動は見られない。診断群分類が変更になっているため、単純な比較はできないが、減少しているものもあれば、カテーテルアブレーションのように増改傾向にあるものも存在する。ただ、トップワンツーは変わっておらず、短期滞在手術が占めているものの、症例数は白内障が約7.9万件、ポリペクが約2.6万件減少し、順位も入れ替わっている。 (残り2013字 / 全3293字) 次回配信は11月13日を予定しています
21年度はコロナ禍でもあり、全国の手術件数は19年度と比較して6%減少したことを連載第193回で取り上げた。ただ、増減率にすると白内障が29%、ポリペクが11%と全体よりも減少が大きい。これは入院を制限せざるを得ない状況にあったため、外来化を図ったという施設もあり、あるべき方向に舵取りが進んだことを意味するのかもしれない。
グラフ1は、NDBオープンデータから水晶体再建術について外来での実施件数の推移を見たものであり、20年度はコロナの影響で特に4月・5月に予定手術を全国で半分まで制限した影響で減少しているが、その後、順調に推移している。
全国の外来比率も65%まで上昇し、このことがDPC参加病院の症例数に影響していると捉えることもできる=グラフ2=。
ただ、実際にはそれだけではなく、地域包括ケア病棟への直入が増加していることは本連載でも取り上げてきたし、入院・外来医療等の調査・評価分科会でも指摘されている通りだ=資料1=。22年度診療報酬改定で200床以上の病院について、院内転棟の制限が加わり、さらに在宅復帰率も基準値が見直された。
そこで、DPC病院を中心に白内障などの短期滞在手術を地域包括ケア病棟に入れる動きが加速することとなった。ただ、その改定の影響を受ける前から、地域包括ケア病棟での手術患者については眼科手術の患者が60%占め、次いで腹部が23%という現実があるわけだ=グラフ3=。
このことについて、地域包括ケア病棟の本来の使い方ではないという意見がある一方で、
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