【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長 、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
病院が突然倒産し、貼り紙1枚で患者や業者などに告知され、地域医療の崩壊が危惧されるという報道がつい最近あった。コロナ禍で患者数が減少し、そのあおりを受けた事例の1つなのだろう。もちろん、コロナバブルにある病院も存在するが、それは急性期一般入院料1などを届け出る一部の比較的大きな急性期病院が中心であり、中小病院の経営は極めて厳しい状況にあると予想する(なお、中小病院でも急性期一般入院料1を届け出る病院は多数存在する)。コロナで退院患者数は減少したものの、全身麻酔手術などはそれほど減少しておらず、比較的軽症な救急患者が減少したことを全国、そして都道府県別のデータを基に明らかにしてきた(連載第193回)。その影響を一番受けるのはウオークインが多くを占める地域の中小病院であり、何らかの補填がなければ廃院がさらに増加する可能性は十分にあるし、倒産ラッシュの危険性もあるかもしれない。グラフ1は全国の病院数を病床規模別に見たものである。
2025年には8,000病院を下回ると私は予想している。その内訳は、70%が200床未満であり、コロナの空床確保の補助金を多額に受け取れたケースは少ないだろう。コロナ患者への対応は、看護師数や面積などのゾーニングなどの問題から比較的規模が大きい病院でないと対応が難しい面があったからだ(連載第146回)。また、空床確保の補助金であるから、病床数が少なければ、どんなに発熱外来などを提供したとしてもその恩恵を受けられたわけではないはずだ。実際、2000年から24年に向けて一番減少が大きいのが100床未満であり、次いで200床台だ=表=。200床台が減少したのは、199床になった方が診療報酬上のメリットがあると考える病院があり、その分、100床台だけが微増している。
そして、施設の老朽化・狭隘化も喫緊の課題であり、それが故に病院を継続できないという判断に至ることも多いはずだ。第一次の医療法改正が1985年にあり、都道府県は医療圏と必要病床数(現在の基準病床数)の設定が求められた。病床規制が行われ、その時期に駆け込み増床が行われた。それから40年が経過しようとしている今、財務状況が悪化の一途をたどり、建て替え余力がない、そして後継者がいないという病院は多いはずだ。ただ、マクロ的には、この国の病床は多すぎるので、病院は減った方が財政的にも健全だという見方もあるかもしれない=グラフ2=。
患者の利便性と施設の集約化を考慮した医療機関の適正配置が改めて必要であるが、民間中心に、そして中小病院を中心に展開されてきた我が国の医療で皆が容易に受け入れられる施策を実現することは容易ではないと考える。
グラフ3は建築時期別の病床数であり、新築が行われるタイミングには診療報酬の改定率などが一定程度関係しているようにも見える=グラフ4=。
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次回配信は10月30日を予定しています
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