【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長 、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
コロナ禍で集中治療機能が重要であることが広く国民に知れ渡り、2022年度診療報酬改定においてICUの重症患者対応体制強化加算が新設され、重症患者に対する14日超えの算定や特定集中治療室管理料以外の重症系ユニットへの早期離床リハビリテーション加算の対象拡大などが行われた。24年度診療報酬改定ではハイケアユニット入院医療管理料に焦点が当たり、「重症度、医療・看護必要度」(看護必要度)などの変更が議論されている。これらを踏まえ、すでに本連載で指摘した点も含めこれからのHCUの在り方について私見を交えて論じる。
■ターニングポイントとなった14年度改定
グラフはICUなどの届け出状況の推移であり、ICUは14年度診療報酬改定を境に減少し、HCUの届け出が増加した。
これは、14年度診療報酬改定においてICUについてA項目3点以上またはB項目3点以上である患者が一定割合以上であることについて、A項目3点以上かつB項目3点以上に基準が変更されたことが影響している。「or」から「and」になり厳格化の方向に進んだことが関係している。
一方で、特定集中治療室管理料の上位加算(加算1・2)が新設され、当時、7日以内の期間について13,500点と一定の要件を基に非常に高い評価が行われた。さらに、ハイケアユニット入院医療管理料について2区分の点数設定となり、加算1が4,511点から6,584点に大幅に引き上げられたことも増加の一因と考えられる。点数も上がったが、「or」から「and」への変更はハイケアユニットにも適用された。
なお、5対1の看護師配置であるハイケアユニット入院医療管理料2については、届け出病院が22年7月1日現在で37病院であり、4対1の加算1がハイケアユニットの中心となっている。
■22年度改定における変更点
22年度診療報酬改定では、一般病棟用の看護必要度から心電図モニターの管理を削除したこととの整合性を図り、ICU用の評価票が変更となったが基準値は1割引き下げられることになった。さらにICUにおいてB項目を基準から除外したが、評価については継続することとした。ICUなのだからB項目を満たす患者がほとんどであるし、早期離床をさせようとする加算などとの趣旨と矛盾する面もあるからだ。
さらに、ICUで看護必要度IIが新設され、A項目の評価について診療実績データであるEFファイルへの置き換えが行われた。日々の評価を行う看護師の負担軽減であり、一般病棟との整合性を図ろうという趣旨になる。ただ、「包括範囲に含まれる項目はEFファイルに出力しない」ことになり、手術日の注射手技料や全身麻酔同日の人工呼吸が算定不可になり、看護必要度は下落する。
これで問題になるのが、連載第105回などでも指摘した心臓血管外科以外の予定手術をルーティーンでICU入室されることであり、今後、厳しくなるだろう。ただ、注目すべきなのはICUにも一般病棟にもない、心電図モニターの管理がハイケアユニット用の評価票には残っていることだ。
■24度診療報酬改定で進行中の議論を踏まえた論点
24年度改定に向けて私が注目する論点として以下の3つを挙げたい。
まず1つ目が、
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次回配信は10月16日を予定しています
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