【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
コロナ禍で患者が戻らないことは医療関係者の常識であるが、本連載でも繰り返し述べてきた。まず連載第167回で2019年度と20年度のオールジャパンの急性期病院の実態に迫り、病床規模や機能、そして地域差などはあるものの全国的に厳しい状況であることを明らかにした。一方で地域の中核病院であってもコロナ前の19年度よりも退院患者数や全身麻酔件数を増加させている病院もあり、一定の役割分担があることにも言及した。また、連載第184回では概算医療費の動向から、やはり20年度は最悪であったが、21年度について外来は戻りつつあるのに対して、入院患者の減少が続いていることに触れた。
病院収入のおよそ7割は入院であるから、それが戻らなければ固定費が多くを占める財務構造である病院において業績悪化は筆致である。さらに、連載第185回では医療施設調査を用いて一般病床、療養病床、そして精神病床といった病床機能別の都道府県ごとの入院患者数などについてデータを提示し、特に一般病床が21年度の患者数が少ないことを明らかにしてきた。
ただ、一般病床といっても、地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟なども含まれることになる。地域によるが、コロナ患者の一定割合は急性期の中核病院が引き受けたであろうから、その実態を明らかにし、今後の方向性を探る必要があると考えた。
本稿では、23年3月22日に公表された「令和3年度DPC導入の影響評価に係る調査「退院患者調査」の結果報告について」のデータを用いて、21年度の急性期病院の診療実績について都道府県別などのマクロ的視点からの視座を提供し、今後のあり方について考えていく。
グラフ1は、
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次回配信は4月17日5:00を予定しています
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