【千葉⼤学医学部附属病院 副病院⻑、病院経営管理学研究センター⻑、ちば医経塾塾⻑ 井上貴裕】
政府はウィズコロナに向けて現状の2類から5類へ段階的に移行することを決定した。岸田文雄首相は2023年1月20日の記者会見および同23日の施政方針演説において、新型コロナウイルス感染症について、現状の2類から5類へ移行することを表明した。
これは、昨年流行したオミクロン株について感染力は強いものの、第一波などの当初と比べ重症化率や死亡率が低下したことが関係しており、ゴールデンウイーク明けの5月8日に5類への引き下げが行われる。
これに伴い医療提供体制も段階的に移行していくことになり、病院としてはどのタイミングでどのような診療体制に移行するのが適切か判断に迷うことだろう。
22年9月27日に厚生労働省医政局医療経理室、厚生労働省健康局結核感染症課、厚生労働省医薬・生活衛生局総務課から発出された事務連絡「令和4年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)の実施に当たっての取扱いについて」によると、病床確保料について1日1床当たりの上限額について病院類型別に金額設定が行われている。その類型は、「重点医療機関である特定機能病院等」、「重点医療機関である一般病院」、「協力医療機関」、「その他医療機関」とされ、協力医療機関の病床確保料は22年9月30日までが対象とされた。
新型コロナウイルス感染症に初めて対峙した時には、いかに空床を確保し、入院させる仕組みを構築するかが重要だったわけであり、「空床をつくることに対する補助金」という側面が非常に強かった。当初は病棟単位でコロナに対応する医療機関を重点医療機関とし、病室単位を協力医療機関と位置づけ、多額の補助金を支払うことにより空床を確保しようとした考えは適切だった。
ただ、22年9月27日の事務連絡では潮目が変わっており、即応病床使用率(前3カ月間)が当該医療機関の所在地の都道府県の平均を30%を超えて下回る医療機関(例:平均が70%の場合、39%を下回るとき)については、減額を行うことになった。
つまり、コロナ用に病床を確保したとしても一定の受け入れ実績がない場合には減額をし、コロナ患者を受け入れていることに対する対価として補助金の位置づけを変更しようとしているのだろう。
今後、5類に変更された場合に補助金の位置づけがどう変わるかは現段階では明らかではないが、多額の補助金が投じられたことは事実であり、コロナバブルに踊る病院が少なからず存在することからすれば、我々としては未来を楽観視することは極めて難しい。
では、重点医療機関としてコロナ患者を受け入れてきた病院はこれからどう動くべきだろうか。
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次回配信は2月20日5:00を予定しています
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