【千葉⼤学医学部附属病院 副病院⻑、病院経営管理学研究センター⻑、ちば医経塾塾⻑ 井上貴裕】
これが2022年最後の連載原稿となる。新型コロナウイルス感染症に2年半以上悩まされる日々が続き、医療機関は社会を守るために必死に闘ってきた。コロナも変異してきているようで、当初と状況は変わりつつある。しかし、いまだ都道府県からの病床確保の要請が続く病院も多く、看護師確保が困難になりつつあると感じる昨今、コロナ病床を維持することにより、さまざまな支障がある医療機関も存在することだろう。
本連載で取り上げてきたが、外来患者数はだいぶ元の水準に戻ったようだが、肝心の入院患者がコロナ前の水準に至らない病院が多い。とはいえ、最悪の20年度と比べれば、かなりましなわけだが、昨今は、材料費や光熱費の高騰が著しく、病院の財務状況は悪化の一途をたどっている。ただ、今はコロナ補助金があるので、帳尻が合っている病院が多いが、仮に今後、空床確保等に関連する補助金が大幅に減額されるようなことがあれば、存続が危ぶまれる病院も存在するだろう。 (残り2310字 / 全3571字) 次回配信は2023年1月10日5:00を予定しています
22年夏の第7波は熱中症患者なども交じり、救急車の著しい不応需が特に都市部で生じてしまった。短期的に新入院患者を確保するために、救急は重要なルートになるわけだが、現場が大混乱する中で、そのような事態になれば入院を制限せざるを得ないことを改めて痛感した。年初めには、コロナ診療と一般診療の両立を目標に掲げた病院も多いが、できることとできないことがあり、そのバランスが極めて難しい中で、病院経営の舵取りをしなければならないことを再確認させられた。
そんな中で、22年度診療報酬改定が行われ、急性期充実体制加算のような高度急性期機能に対する手厚い評価が行われた一方で、地域包括ケア病棟の院内転棟に制限が加えられたことには衝撃が走った。20年度改定で400床以上を対象に自院からの院内転棟60%以上の場合に10%の減算を200床以上に拡大し、15%の減算とされた。400床以上の地域包括ケア病棟は極めて数が少なく、ある意味見せしめ的な意味合いが強かったと感じるが、200床以上とされたことにより本丸に突っ込んできた印象だ。
連載第155回の「DPC病院に地ケアは必要か、その在り方を考察する」では、コロナ前の19年度のデータを用いて都道府県別の一般病床の平均在院日数と75歳以上人口10万人当たりの地域包括ケア病床数には強い正の相関があり、さらに地域包括ケア病床数と一人当たり実績医療費についても一定の相関があることを指摘した=グラフ1、2=。
地域包括ケア病棟を設置すると「経営が安定する」という「入院医療等の調査・評価分科会」の調査結果とある意味整合する結果でもある。
一方で、地域包括ケア病棟の使い方が大切なわけで、DPC参加病院、そして200床以上の病院などで院内転棟が多く、都道府県別で見てもDPC参加病院が地域包括ケア病棟を有する病院の割合と院内転棟割合には一定の正の相関が見られた=表1、2、グラフ3=。
結局、
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