【国際医療福祉大学大学院 医療福祉経営専攻 教授 石山麗子】
第104回社会保障審議会介護保険部会(12月5日)では「介護保険制度に関する見直し(案)」が示された。「I.地域包括ケアシステムの深化・推進」、「II.介護現場の生産性向上の推進、制度の持続可能性の確保」の2つの章から構成されている。ケアマネジメントに関する記載は、I章に2カ所ある。1カ所目は<一人ひとりに寄り添う介護サービス>という見出しで、個別ニーズに応じたサービス提供の重要性とケアマネジャーの専門知見への期待等が書かれている。2カ所目は、その実現に必要な事項が示されている。
近年、業務効率化優位と思えるような改正が行われてきたが、今般のケアマネジメントに関する2カ所の記載を見ると、若干路線変更されたように感じる。そこで、特徴的かつ対比的な2つの言葉の出現頻度を比較してみた。「業務効率化」は2カ所、「質」は6カ所と3倍である。質を重視したと解した。<一人ひとりに寄り添う介護サービス>を本当に実現するなら、個別ニーズを捉え、応える力を持たねばならない。
最近、筆者が行っている利用者との面談調査では「天国も地獄もケアマネ次第」という声があった。短いながらこの言葉は、利用者の生活はケアマネジャーのケアマネジメント能力に依拠している一方で、ケアマネジャーごとの力量にバラつきがあるということを言い当てている。
こうした状況下で厚生労働省は<一人ひとりに寄り添う介護サービス>に対応するケアマネジメントの質の向上をいかにして実現するのか。残念ながらその答えは「介護保険制度に関する見直し(案)」には見当たらない。とはいえ、厚労省が無策のまま、このような記載をするはずはない。公表されないところで準備は進められている。居宅介護支援事業所の経営者や管理者が知っておくべきことは、部会資料よりもむしろそちらである。
実は、介護保険制度施行以来の大きな改革ともいえる状況がある。筆者は事業や施策を惑星にたとえ「ケアマネジメントの惑星の直列」と称している。
(残り2148字 / 全3001字)
次回配信は2023年2月ごろを予定しています
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】