【千葉⼤学医学部附属病院 副病院⻑、病院経営管理学研究センター⻑、ちば医経塾塾⻑ 井上貴裕】
前稿では、コロナ禍の患者数について医療費の動向を基に取り上げ、コロナ前と比較して、2021年度も厳しい状況があることについて触れた。その後、11月30日に医療施設調査の結果が明らかとなり、より詳細なデータを基に、本稿では病院機能別、都道府県別の患者数の推移について明らかにし、今後の病院経営戦略を考える際の素材を提供したい。
表は病院機能別(一般病床、療養病床、精神病床)に平均在院日数、病床利用率、人口10万人当たり新入院患者数を見たものである。ここから、20年の病床利用率が最悪であり、その後、少し持ち直している傾向が把握できる。ただ、病院機能別で見ると、療養病床や精神病床について、新入院患者数はほぼ横ばいであり、平均在院日数が短縮されたことにより、病床利用率が低めになっていることが分かる。最も減少幅が大きいのが一般病床であり、コロナ禍の影響はあるのだろう。コロナの重点医療機関になった多くが一般病床であるのだから。
平均在院日数についてじわじわと短くなってきたのが、20年度に初めて延長された。平均在院日数の計算式が、新入院患者数と退院患者数を足したものを2で除したことが関係し、新入院患者数が少なかったことも影響しているだろう。ただ、コロナ禍で病院が在院日数を延長したかというとそうではないと考える。コロナ病床を確保し、平時よりも少ない病床での運用が余儀なくされたわけであり、病床回転率は上がっているのではないだろうか。ただ、眼科、耳鼻科、小児科などの短期入院が少なかったことが指摘されており、その影響があるのかもしれない。とはいえ、前稿でも取り上げたように、入院診療単価は上昇している病院が多い。ただ、21年も一般病床の患者数は戻らず、多くの病院が苦戦を強いられている状況は明らかである。
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次回配信は12月26日5:00を予定しています
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