【北海道介護福祉道場 あかい花代表 菊地雅洋】
介護保険制度改正や報酬改定にも影響すると思われる、「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太方針2022)が、6月7日に閣議決定された。
2018年以降の骨太方針では、「25年度の国・地方を合わせたプライマリーバランス(PB)黒字化」が最大の目標として掲げられ、そのために社会保障関係費を高齢化による増加分に相当する伸びに収め、さらに非社会保障関係費を3年間で0.1兆円程度にするという「キャップ制」の予算編成が行われていた。そのため、19-21年度の非社会保障費は、年間3百数十億円ずつしか増加してこなかった。
しかし、骨太方針2022の原案作りの過程では、コロナ禍による経済停滞などの影響を受け、非社会保障関係費の予算キャップを外すべきだという意見が強く押し出された。そして、「経済あっての財政」という財政積極派の意見が通り、財務省がその意見に屈した形で、「25年度のPB黒字化」という考え方が盛り込まれなかったのである。
ところが、これに反発する財務省は、骨太方針2022に「令和5年度予算において、本方針及び骨太方針2021に基づき、経済・財政一体改革を着実に推進する」という文言を入れ、実質的に予算キャップをはめたままにした案を自民党政調会に提出し、議論が紛糾した。
その後、案文は修正され、決定された骨太方針2022では、紛糾の原因となった「骨太方針2021に基づき」という文言は残ったものの、「ただし、重要な政策の選択肢を狭めることがあってはならない」との文言が新たに加えられた。これによって、予算キャップがはめられているものの、それは臨機応変に外すことができるとされた。
しかし、財務省はこのことにも抵抗し、予算キャップを外す場合は「必ず増税が必要」と読める脚注を付けて6月6日の自民党政調会に案文を示していたが、その脚注をそのまま認めるかどうかは政調会長預かりとして会合を終えた。その後、政調会長が当該脚注を削除すると決断し、決着した。
つまり、この攻防で財務省は惨敗したということになるだろう。ただ、財務省が敗者のまま、黙っておとなしく身を引くとは思えない。今後、骨太方針の議論の過程で惨敗したしっぺ返しが、24年度の介護保険制度改正や介護・診療報酬ダブル改定に向かないとも限らないため、介護関係者は警戒が必要だ。
■処遇改善加算、次期改定でさらに上乗せか
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