【千葉⼤学医学部附属病院 副病院⻑、病院経営管理学研究センター⻑、ちば医経塾塾⻑ 井上貴裕】
2022年4月13日の中央社会保険医療協議会で歯科用貴金属の基準材料価格の緊急的な改定が行われることになった。ウクライナ情勢下でもあり、特にパラジウムの素材価格が年初に比べて急上昇していることが背景にある=図表1=。
図表1
これについては、22年度改定前は告示価格に対して平均素材価格が一定以上変動した場合に改定することになっていた。今回改定で変動幅にかかわらず、平均素材価格に応じて年に4回見直すとされたばかりだったが、緊急的に前倒しをすることになった=図表2=。
図表2
実勢価格に応じた見直しをすること自体は適切な方針と考えられ、それを適切に反映した中医協の判断は歓迎されるべきことだろう。ただ、価格変動は歯科用貴金属だけではないわけであり、今後予想されるインフレ、エネルギーコストや物流費の高騰、さらに円安なども病院経営には影響を及ぼすことになる。もちろん、コストが上昇したからといって、その全てを診療報酬で補填してほしいという安易な考えを病院経営者は持つべきではなく、低コスト運営に向けた努力を惜しまない姿勢が必要である。
そもそも長らく続いてきた物価下落局面だからといって、それを理由に診療報酬を随時下げてきたわけではない。公定価格である診療報酬に病院は守られている面があることは忘れるべきではないだろう。ただ、働き方改革や看護師などの処遇改善で人件費の上昇が予想される中で、その他コスト上昇についても抑えようとしても抑え切れないところまで到達しようとしているのではないだろうか。
特にコロナ前から指摘されてきた病院給食が赤字であることについて、今後さらに赤字幅が拡大する可能性が高く、見直しが喫緊の課題である。本稿では入院時食事療養費制度を振り返った上で、病院給食の収支状況に触れ、今後の在り方について私見を述べる。
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次回配信は5月30日5:00を予定しています
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