【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
病院の収支状況が何に左右されるかは、本連載で繰り返し述べてきた。医薬品材料費が高騰する昨今、今後もその傾向は続くと予想され、それが財務状況を厳しくしている(連載第159回)。しかし、一番大きな要素は人件費であることは言うまでもなく、人件費比率がおよそ50%程度である業界特性からして労働集約型産業という特性を帯びている。
もちろん、病院機能によって傾向は異なり、慢性期の人件費比率は高いが医薬品材料費比率は低く、高度急性期の人件費比率は低いが医薬品材料費比率が高いという特徴を有している。ただ、いずれも収益の40-60%を人件費に投じており、人員配置をどう考えるかが病院経営にとって極めて重要であることは、誰しも納得するだろう。
人件費比率というと、人を増やさないことが重要だと考えがちだ。特に自治体病院では総定員法の影響もあり、給与テーブルが一定年齢まで上がり続けることも関係して、その傾向が顕著になる。確かに患者数に見合わない過剰な人員配置は慎むべきであるが、医療は高度化・複雑化しており、病棟再編などさまざまな打ち手を弾力的に行うためにも、少し余裕を持つことも重要であると私は考えている。人員配置の自由度がないと、経営者がその手腕を発揮することは難しい。なお、災害や新興感染症などのリスク要因を考えると、なおさらそうだろう。
目の前の患者に接する現場からすれば、人を増やすことにより、より良いサービスが提供できると考えるはずで、また自らの負担軽減という意味でも追加の人員配置の要望は尽きない。しかし、それを全てのんでいたら経営は成り立たない。バランス良くどこかで折り合いを付ける必要がある。
本稿では、最もマンパワーを必要とする急性期病院における人員配置の実態を明らかにし、適正配置を考える素材を提供していく。
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次回配信は2月14日5:00を予定しています
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