【国際医療福祉大学大学院 医療福祉経営専攻 教授 石山麗子】
厚生労働省は10日、社会保障審議会・介護給付費分科会の介護報酬改定検証・研究委員会を開催し、LIFEが導入された今年度、2つの調査事業を行うと説明した。1つは、LIFE を活用した取り組み状況の把握であり、もう1つは未導入である訪問系サービス・居宅介護支援事業所における LIFE の活用可能性の検証である。後者はモデル事業で、訪問介護事業所、訪問看護事業所、居宅介護支援事業所の各10カ所を対象に行われる。
居宅介護支援事業所を対象としたモデル事業は、アンケート調査で LIFE 活用の具体的なユースケース、LIFE 導入における課題等をスクリーニングした上で、ヒアリング調査で詳細の把握を行う、とされている。厚労省がLIFEと居宅介護支援の関連について示したのは、解釈通知を除けば初めてである。それが改定検証委員会であることを踏まえれば、極めて重要なミッションと意味を持つモデル事業である。だからこそ懸念していることがある。
介護保険制度の施行以降、長年にわたり「制度の要」と言われてきた介護支援専門員だが、2021年度の制度改正の目玉とも言えるLIFEに関しては、「蚊帳の外」(本連載第4回、7月28日掲載)とさえ言われている。実際に、居宅介護支援事業所の介護支援専門員がLIFEに関わる場面といえば、国保連請求に関わる給付管理で、各事業所が報告するLIFE に関連する加算の承認をする程度である。
そのような現状から、介護支援専門員のLIFEの理解度は、「LIFE自体よく分からない」、「(LIFEとの関わりで)介護支援専門員は何をしたらよいか分からない」、「LIFEの情報提供を始めている事業所はあるが、加算算定が主目的だから特にケアマネに求められることはなさそうだ」という状況だ。つまり、知らなくても特段大きな支障は出ていないし、拙速に、これといって対応する必要もなさそうだという認識が大勢だ。
他方、施設ではどうか。施設のケアマネジメントを巡り、その役割の不明確さや実行の難しさについて悩みの声を上げる「施設介護支援専門員」は筆者の経験から少なからずいた。施設介護支援専門員と一緒にそれを考える取り組みもこれまで行ってきた。とはいえ実情は、社会保障審議会での施設介護支援専門員に関する議論すら、この10年ほどない。
そのような中において、LIFEが施設のケアマネジメントを大きく飛躍させる可能性を秘めていると筆者は考え、大きな期待を寄せている。そればかりか、施設の介護支援専門員が居宅の介護支援専門員に助言できる場面が格段に増えるとも予想している。
(残り1880字 / 全2984字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】