【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
新型コロナウイルスが猛威を振るい、大阪から西に向けてだけではなく、全国的に深刻さが増している。仮に、緊急事態宣言が5月末で解除された場合、医療提供体制が危険水域となる地域も出てきかねない状況になるかもしれない。
政府は、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象となる都道府県のうち、2020年12月25日から21年6月13日までに新型コロナウイルス患者への病床が割り当てられた病院に対して、病床確保数による補助を行うことでさらなる病床確保を狙っている。この補助は、前年度に補助を受けていない病床が対象となるため、新規の病床確保を促進するためのものである。もちろん、継続的に補助を行ってもらえることに対して病院は感謝すべきであるが、そもそもコロナ前から赤字であった病院業績、具体的には医業損益はより一層深刻になりつつある。
グラフ1は、日本病院会等による「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査」を集計したものである。初めての緊急事態宣言が発出された20年5月が特に深刻で、コロナ患者を受け入れた病院について対前年度比で約15ポイント、医業利益率が悪化している。その後、回復基調になり、ようやく9月ごろに回復の兆しが見えてきたかと思ったのもつかの間、第3波が襲来し、その後の業績悪化に歯止めがかからない状況だろう。
グラフ1 ※クリックで拡大(以下、同様)
悪化の要因は患者数減少によるものであり、外来延べ患者数、入院延べ患者数、救急車搬送件数、さらに定例手術件数についても、前年同月よりも明らかに減少している=グラフ2=。一方で、緊急手術については何とか踏ん張っていて、コロナ患者を受け入れながらも命を支える取り組みを継続していることがうかがえる。
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次回配信は6月7日5:00を予定しています
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