【株式会社MMオフィス代表取締役 工藤高】
前回の2014年度診療報酬改定は地域包括ケアシステムの構築を実現するため、「病床機能分化」「在宅復帰の促進」「質の高い在宅医療の推進」を政策誘導する点数や要件が盛り込まれた。在宅復帰の促進については、急性期から慢性期まで在宅復帰率に関する要件や加算を設定することにより、ベクトルとして「もれなく在宅等へ」という流れができた=図1=。この「もれなく在宅等へ」の流れは、中央社会保険医療協議会(中医協)の最近の資料でも明確になっている=図2=。
来年の16年度改定に向けての議論の中で納得できないのは、7対1の在宅復帰率(自宅等退院患者割合)について、「計算式の分子に入る在宅復帰率が要件となっている病棟への転院と自宅への退院が同等に評価されているが、自宅退院はもっと高く評価したらいい」という意見が出ていることだ。これだと小児科や眼科、耳鼻科等のもともと自宅復帰率が高い診療科入院患者を多く抱える病院は有利であり、一方、脳外科単科病院や整形外科専門病院は不利になることが多い。
厚生労働省が盛んに推進してきた病病連携において、7対1からダイレクトに自宅や居住系介護施設に帰れる疾患は、一部の急性期疾患や重症患者を診る一部の在宅医療を除いて、そもそも本当の急性期なのであろうか。それらはサブアキュート(亜急性期)やポストアキュート(急性期後)であり、地域医療構想の病床機能4区分でいえば、「高度急性期」「急性期」ではなく、最初から「回復期」の患者が多いと思われる。
自宅復帰を高く評価することは、救急病院から後方病院への7日以内の転院を評価した「救急搬送患者地域連携紹介加算」自体のコンセプトも否定することになってしまう。在宅復帰率割合が厳しい救急病院側は、それならば7日以内の後方病院への紹介転院はやめて、自院から在宅復帰を図ることになるからだ。
前回改定時に「在宅復帰率割合のある病棟への転院は、同一患者でなくても一定割合の患者は自宅に帰るから在宅と同等」としたはずであり、それがもし、2年で方針変更となるならば「朝令暮改」以外の何物でもない。
本稿では、自宅への退院割合は地域連携室の努力よりは、ケースミックス(患者構成)の違いによるところが大きいことを、弊社調査データを用いて説明したい。
次回配信は10月28日5:00を予定しています
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