日本看護協会(日看協、坂本すが会長)は27日、2016年度診療報酬改定に関する要望書を厚生労働省に提出した。中央社会保険医療協議会(中医協)の専門部会が実施した14年度改定の影響調査で算定実績がゼロだったとして、「月平均夜勤時間超過減算」の廃止を要望したほか、患者がより良い状態で退院するための看護師の役割の評価、「小児版」機能強化型訪問看護ステーションの新設などを求めている。【佐藤貴彦】
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入院基本料の月平均夜勤時間超過減算は、看護職員の月平均夜勤時間数を72時間以下にするルールを満たせない場合の病院経営への影響を緩和する特例措置。これまで、一般病棟7対1入院基本料などに限り同様の措置があったが、14年度改定で対象が大幅に拡大された。
中医協の専門部会の調査で、勤務医の処遇改善などに積極的な病院に、昨年4月から10月までの同減算の算定状況を聞いたところ、実績があると答えた病院がゼロだった =関連記事= 。
看護職員の労働環境をめぐって、要望書ではそのほか、夜勤専従者の夜勤の上限時間を入院基本料の施設基準に明記したり、看護職員の勤務と勤務の間隔を11時間以上空けるといった病院の取り組みを評価したりすべきだと主張している。
さらに、病棟で働く看護職員の書類作成などの負担を軽減するための事務作業補助員の配置や、地域包括ケア病棟での看護補助者の配置の充実などに対する評価も要望。地域包括ケア病棟では、患者に提供するケアの全体像を把握して、それに関係する多職種の調整を看護師が主体となって実施することも評価すべきだと訴えている。
また、患者がより良い状態で退院できるように、廃用症候群の予防などを目的とするプログラムに基づいて、看護師を中心とする多職種が急性期の段階から訓練を実施することも評価すべきだと指摘。さらに、認知症の悪化防止も重要だとして、看護師や理学療法士などを配置した「院内デイケア」を設置し、認知機能の悪化防止のための取り組みを行う病院を評価するよう要望している。
■機能強化型ST、ターミナルの要件緩和を
訪問看護の評価をめぐっては、14年度改定で新設された機能強化型訪問看護ステーションのターミナルケアに関する要件の緩和を要望。訪問看護ステーションが認知症対応型グループホームと連携して利用者のターミナルケアを実施する場合、そのグループホームが「看取り介護加算」を算定すると「訪問看護ターミナルケア療養費」が算定できないルールだと指摘し、そういった場合でも同療養費の算定実績として認めるよう求めている。
さらに、「小児版」の機能強化型訪問看護ステーションの評価が必要だとして、利用者総数に占める小児の割合が一定以上で、地域の医療職などに向けた講習会などの実績がある場合は、機能強化型訪問看護ステーションの要件のうち、ターミナルケアに関するものを免除すべきだとしている。
また、特別養護老人ホームの利用者などが医療保険の訪問看護の対象となる疾患や状態像の拡大や、訪問看護師が主治医と連携して、終末期の利用者・家族などの意思決定を支援したり、関係者間の調整を行ったりした場合の評価「意思決定支援療養費」の新設なども必要だと主張している。
■看護職を中医協委員に
そのほか、看護職を中医協の診療側委員として任命することも検討するよう要望している。
中医協の委員は、保険者など支払側7人と医師や歯科医師など診療側7人、公益を代表する6人の計20人で構成される。そのほかに10人まで専門委員を置けることになっており、現在、このうち1人を日看協の福井トシ子常任理事が務めている。
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