【株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺優】
■「消費税増税で病院経営が厳しい」は間違っていなかった
2019年10月、消費税が8%から10%に増税される。そもそも消費税は「社会保障・税一体改革により、消費税率引上げによる増収分を含む消費税収(国・地方、消費税率1%分の地方消費税収を除く)は、全て社会保障財源に充てることとされています」(財務省「消費税の使途に関する資料」より引用=図=)とされており、国民皆保険制度下の医療・介護を支えるために必要な税収と言える。具体的には、消費税5%から8%への増税による増収分等を活用し、地域医療介護総合確保基金が創設された。
図 消費税収の国・地方の配分と使途
財務省 消費税の使途に関する資料より引用
しかしながら、さまざまな病院で消費税増税が病院経営にマイナスであるという声を聞いた。とはいえ、消費税増税に対する補填は、増税による日本全体の影響額を推計し、診療報酬の初診料・再診料・入院料に点数を上乗せする方式が取られている。この補填の方式はマクロで考えられており、委託費や設備投資の「多い・少ない」を考慮していない。そのため、病院で厳しいと聞いても、「きっとどこかの病院はプラスになっているのだろう」と考えるしかなかった。
感覚が現実に変わったのは、18年7月25日の消費税負担に関する分科会である。医療機関の種別ごとに補填のばらつきが生じていることから、より適切な補填に向けた検討を行うため、改めて補填率の数値が示された=表=。その際、NDBデータの入院日数に関する集計が誤っていたことから、3年前に示されていた補填率(1)と大きく異なる数値(2)になっていた。
表 病院、診療所、薬局の診療報酬による消費税の補填率
厚生労働省 第13回(2015年11月30日)、第16回(2018年7月25日)中央社会保険医療協議会診療報酬調査専門組織・医療機関等における消費税負担に関する分科会の資料を基に作成
病院団体などは、独自の調査結果を基に十分補填されていないと主張していたが、実際、病院は個別で見た場合にばらつきがあるという以前に、精神科病院を除いた病院全体で補填されていなかった。
■影響度合いは、大学病院>一般病院(一般病棟)>一般病院(療養病棟)
算定入院料の違いにより、補填率に差異が生じているかを見た=グラフ1=。特定機能病院の補填率は61.8%と極めて低い水準となっている。
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