医療や介護など各分野の規制緩和策を盛り込んだ「規制改革実施計画」が閣議決定されたのを受けて、厚生労働省は、遠隔診療と対面診療の組み合わせによる対応が初診時にも可能だと通知する方針を固めた。2015年8月に出した事務連絡の中で同省は、疾病に対して「一応の診断」を下せる場合は医師法に抵触しないことを明らかにしたが、地方によってこれへの解釈にばらつきがあり、改めて明確化する必要があると判断した。ただ、診療報酬の初診料は算定できないままだ。来年春に診療報酬改定を控える中、その取り扱いに注目が集まる。【佐藤貴彦、兼松昭夫】
実施計画では、初診時などの遠隔診療の取り扱いを今年度の上期中に明確化するよう厚労省に求めており、これを受けて同省では、遠隔診療と対面診療の組み合わせによる対応が初診時にも可能だと9月末までに通知する。
医師がテレビ電話などで患者を診る遠隔診療をめぐっては、医師法が禁止する「無診察診療」に当たるケースもあるとの指摘があり、1997年に当時の厚生省が、法に抵触しないケースの考え方を明示。通知で、対面診療に「代替し得る程度の患者の心身の状況に関する有用な情報が得られる場合」は問題ないことを明らかにした経緯がある。
しかし、初診の患者や急性期疾患の患者らへの診療は対面が「原則」だといった考え方を同省が併せて示したことなどから、初診時は遠隔診療が認められないと考える医療関係者が少なくなかった。
こうした状況を踏まえて政府は、遠隔診療のルールを分かりやすくする方針を2015年に決定。厚労省が事務連絡で、「直接の対面診療を行った上で、遠隔診療を行わなければならないものではない」といった解釈を示した。それにもかかわらず、「医師法違反だと言われるケースも非常に多い」といった指摘があることから、同省は改めて明確化することにした。
■遠隔患者の初診料の扱いも論点に?
遠隔診療をめぐっては、その「診療報酬上の評価の在り方」を検討する方針が規制改革実施計画に盛り込まれるなど、公的保険制度の中での取り扱いを見直す機運が高まっている。
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