横浜市立大学麻酔科教授で同大附属市民総合医療センターの病院長も務める後藤隆久氏は、これまで医局の“生産性”を上げようと試行錯誤してきた。そうしなければ現場が回らなくなり、医師も去ってしまうという危機感があった。医師が残ろうと思うには医師の成長欲求を満たすのが重要で、「医師の人生設計を支援するのが大学医局の本当の仕事ではないか」と後藤氏は話す。【大戸豊】
後藤氏が、“生産性”を高める必要に迫られた背景の一つには、2005年ごろに全国で起こった麻酔科医の一斉退職などによる「麻酔科崩壊」の経験がある。
06年に帝京大から横浜市立大の教授に着任した際、医局では多くの病院に医師を派遣しており、中には2、3人の麻酔科医でしのぐ病院もあった。このような病院では夜間や週末を中心に月に10-15日もオンコールをする必要があるし、休暇取得や学会出張も制限される。
後藤氏は、「症例が豊富で人間関係が良ければある程度までは医局に残ってくれるが、過重労働が続くと疲弊して辞めてしまう」と話す。
また、新臨床研修制度がスタートしたり、日本麻酔科学会が専門医制度改革を進め、プログラム制度を導入したりという環境の変化に伴い、これまで神奈川県での勤務を希望する医師が多かった同大にも全国から医師が集まってきた。地元志向が薄れる中、県内で働き続けてもらうには何が必要かを考えた。
■女性支援に限界、男性医師にも「時間の裁量」が必要
後藤氏が考える医局に残ってもらうための方法は2つで、1つは専門医の資格取得後のキャリアプランの発展性を確保すること。もう1つは一人一人の労働時間をできるだけ抑えることだ。
麻酔科は女性が多く、20歳代では6割を占めるといい、横浜市立大でも麻酔科医の半分以上を女性が占め、若い世代では7割近くになる。
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