生活援助サービスその他の給付の見直しの項目である。その中には、18年度の介護報酬改定に関して、次のような文言が明記されている。 「生活援助を中心に訪問介護を行う場合の人員基準の緩和及びそれに応じた報酬の設定を行う」
「通所介護などその他の給付の適正化を検討する」 人員基準を緩和した上での見直しが報酬の引き上げということは極めて考えにくい。生活援助を中心とした訪問介護の報酬設定は削減の方向で検討される可能性が高いと言える。通所介護については、報酬削減を意味する「適正化」という言葉が盛り込まれている分、さらに報酬削減の可能性が高い。 何よりも、これらの文言がおおよその方向性を決める今回の大臣折衝の段階から盛り込まれている点が重い。 生活援助を中心とした訪問介護と通所介護については、18年度の同時改定においても、極めて厳しい結果を突き付けられる恐れがある。 さらに、軽度者に対する生活援助サービスなどについては、19年度末までに「介護予防訪問介護等の(地域支援事業への)移行状況を踏まえつつ引き続き検討し、その結果に基づき必要な措置を講ずる」と記された。 軽度者に対する生活援助サービスの地域支援事業化は、18年度の介護保険制度改正では見送られる見込みとなったが、これは、あくまで一時的な見送りにすぎない。18年度の次の介護保険制度改正までには、何らかの措置を講じる-。 今回の大臣折衝で盛り込まれた内容からは、そんな国の強い意思が垣間見える。 ■要介護状態の改善などで保険者を評価へ
さらに、18年4月をもって施行する事柄として、保険者機能の強化が掲げられた。
この項目では、市町村などの保険者の自立支援や重度化防止のための取り組みを推進するため、財政的インセンティブの付与を18年度の予算編成過程で検討すると明記。成果を評価するための客観的な指標の具体例として、「要介護状態の維持・改善の度合い」と「年齢調整後の1人当たりの介護給付費の水準」が示されている。 この項目も社会保障審議会介護保険部会などで議論された内容だが、大臣間での合意が具体的な指標にまで至っている点が重要だ。
要介護状態の維持・改善や介護給付費の削減が目標と位置付けられ、インセンティブまで掲げられた市町村が一体、どのような活動に乗り出すのか-。各事業所が今後、注目すべきポイントの一つだ。 ■大変革を迫られる福祉用具貸与
福祉用具貸与については、18年10月に施行される見直しとして、▽国が商品ごとに全国平均貸与価格を公表▽福祉用具貸与事業者に対し、商品の全国平均貸与価格の利用者への説明や、機能や価格帯の異なる複数商品を利用者に提示することを義務化(複数商品の提示の義務化は18年4月施行)▽商品ごとに貸与価格の上限を設定-が明記された。 ■紹介状なし患者の定額負担見直しが論点に
一方、18年度診療報酬改定に向けては、紹介状を持たずに受診した外来患者らから病院が特別料金を徴収する現行制度の見直しを検討する方向性が盛り込まれた。「かかりつけ医」の普及を目指すもので、「定額負担の対象の見直し」を含めて具体的に検討し、来年度末までに結論を得ることとしている。 現行制度では「選定療養」の費用として、一般病床200床以上の病院だけが、そうした患者から特別料金を徴収できる。また、このうち一般病床500床以上の地域医療支援病院や特定機能病院には今年4月、特別料金の徴収が義務付けられた。 義務化の対象病院には、特別料金の金額に関するルールもある。例えば、内科などの初診を紹介状なしで受けた患者からは、最低でも5000円徴収する決まりだ。これに対し、昨年7月時点で実際に一般病床200床以上の病院が設定していた特別料金の平均額は2474円だった。4月以降、特別料金の額を大幅に引き上げた地域医療支援病院などは少なくないだろう。 そんな中、「かかりつけ医以外」を受診した患者に負担を求める新制度の導入に関する議論が、今月8日まで社会保障審議会の医療保険部会で行われた。政府の経済・財政再生計画の改革工程表を踏まえたものだ。 工程表では年末までに結論を出し、必要に応じて来年の通常国会に関連法案を提出するといったスケジュールが示されていた。しかし、新制度を導入する方向で委員の意見が一致することはなく、「かかりつけ医」の定義が不明確だと指摘する声などが相次いだ。 19日の大臣折衝で合意された方向性を見ると、「まずは病院・診療所間の機能分化の観点」から「病院への外来受診時」の特別料金に関して見直しを検討するとしている。 つまり、外来患者が診療所を受診した場合の負担の在り方は論点から外れている。一方、特別料金の徴収の義務化の対象病院については、拡大を含めた議論が今後展開される可能性がある。 ■徴収した特別料金の扱いめぐる議論が再燃?
また気掛かりなのは、「医療保険財政の持続可能性の観点」なども踏まえて検討すると明記している点だ。現在、徴収した特別料金は病院の収益として取り扱われるが、今年4月の制度改革に向けて議論した医療保険部会では、徴収した分だけ保険給付を縮小させる案を厚労省が示す場面もあった。 結局、病院が義務的に徴収した特別料金も病院の収益になる形で決着したが、その取り扱いをめぐる議論が再燃する恐れもある。 ■18年度末が期限の検討事項も
さらに、「かかりつけ医以外を受診した場合の定額負担の導入」を含め、「かかりつけ医の普及を進める方策や外来時の定額負担の在り方」を検討し、その結果に基づいて必要な措置を講じる方向性も示されている。その期限は18年度末で、法改正を要する大型の制度改革の影がちらつく。 また同年度末に向け、いわゆる市販品類似薬の医療保険上の自己負担の引き上げについても検討し、その結果に基づいて必要な措置を講じることとしている。 市販品類似薬に関しても改革工程表に沿って医療保険部会で議論されたが、そうした薬剤に関する自己負担の割合を高めるといった制度改革は見送られた。慎重論を唱える委員の論拠の一つは、02年度に公布された健康保険法などの改正法の附則が「将来にわたって7割の給付を維持する」と規定していることだった。 18年度末まで残された時間は2年余りだ。その先を予見するのは難しいが、19日の大臣折衝で厚労相・財務相が合意した方向性が医療・介護の保険制度の抜本改革の端緒だったと振り返る日が近い将来、訪れるかもしれない。
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