中央社会保険医療協議会(中医協)の「医療機関のコスト調査分科会」(分科会長=田中滋・慶大大学院教授)は4日、2011年度の「医療機関の部門別収支に関する調査」の報告書を了承した。ただ、委員からは調査結果を疑問視し、調査手法が適切かどうか検証するよう求める声が相次いだ。
11年度調査では、2899病院に協力を依頼し、361病院が承諾。このうち、すべての調査票を提出した181病院について、10月分のレセプトデータや保険外収益などを基に、39の「レセプト診療科」や、類似の診療科を集めた14の「診療科群」別に、医業収益に対する収支差額を計算した。
181病院の内訳は、DPC対象病院が146病院、DPC準備病院が12病院、これら以外が23病院。全体の回答数は、10年度調査の187病院から減ったが、DPC対象・準備病院以外は9病院から大きく増えた。病床数別では、199床以下が54病院、200-499床が97病院、500床以上が30病院で、平均303床。開設者別にみると、国公立が56病院、医療法人が52病院、その他が73病院だった。
調査結果によると、12の主要レセプト診療科のうち、入院・外来計で収支差額が黒字だったのは、外科(利益率8%)、脳神経外科(4%)、泌尿器科(3%)の3科。ただ、いずれも10年度調査より利益率が低かった。一方、赤字だったのは皮膚科(マイナス54%)、産婦人科(マイナス16%)、放射線科(マイナス14%)、眼科(マイナス7%)、内科、整形外科、耳鼻咽喉科(各マイナス6%)、循環器科(マイナス5%)、小児科(マイナス4%)の9科。10年度に引き続き、皮膚科の赤字の割合が最大だった。また、循環器科(10年度は20%の黒字)の利益率が大きく落ち込んだ。
ただ、回答した病院が少なく、診療科によっては回答数が1ケタしかないことや、10年度調査から引き続き答えた病院が57施設しかないことなどから、厚労省では診療報酬改定の資料にはせず、参考にとどめる方針だ。
こうした調査結果を受け、石井孝宜委員(石井公認会計士事務所長)は、麻酔科の外来が132%の赤字だったことに疑問を呈した上で、「コストの集計の仕方、考え方自体が適切かどうか、再評価をしなければならないのではないか」と問題提起。近藤俊之委員(全国社会保険協会連合会顧問)は、診療報酬改定がなかったにもかかわらず、11年度に収支が大きく悪化した診療科があることを疑問視し、「制度設計のところに戻って検証することが必要」との見解を示した。
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