中央社会保険医療協議会(中医協)の「医療機関のコスト調査分科会」(分科会長=田中滋・慶大大学院教授)は6月30日、昨年度の「医療機関の部門別収支に関する調査」の報告書案を了承した。7月中旬に開かれる総会で、田中分科会長が報告する。今回の調査結果では、DPC対象・準備病院以外の9病院が初めて最後まで参加し、調査項目の簡素化の影響が多少なりとも見られた形だ。
同調査は、医療機関のコストを診療報酬に適切に反映させるため、診療科部門別で統一した計算方法を開発することが目的で、今回は2008年度に続いて2回目。
今回の調査では、対象となった366病院のうち、期日内に回答した187病院(51.1%)のレセプトデータ(昨年10月分)と保険外収益を集計。「レセプト診療科」(39科)や、類似の診療科を集めた14項目の「診療科群」などで医業収益に対する収支差額(入院・外来計)を調べた。病院の内訳は、DPC対象病院164施設、DPC準備病院14施設、これら以外の病院9施設で、病床規模は200床未満が29病院、200―499床が105病院、500床以上が53病院だった。
主要レセプト診療科(12科)は、小児科や整形外科など8科の利益率が前回より高かったものの、内科、皮膚科、産婦人科、耳鼻咽喉科の利益率はそれぞれ減少し、放射線科を含めた5科が赤字。皮膚科の赤字幅がマイナス62%(前回比16ポイント減)で最も大きかった。一方、主な診療科群(11群)では、小児科や精神科といった6群で利益率がアップしたが、内科群、産婦人科群、耳鼻咽喉科群、皮膚科群、麻酔科群、放射線科群が赤字だった。
一方、開設者別では国公立がプラス3%、医療法人同9%、その他同4%で、病床規模別では200床未満が同5%、200―499床同3%、500床以上同5%。開設者別、病床規模別でいずれも前回より利益率が上昇した(入院・外来計)。
主な診療科群を入院・外来別に見ると、外来ではすべての群が赤字で、麻酔科群の赤字幅がマイナス138%と最大。以下は産婦人科群(マイナス90%)、皮膚科群(同82%)、耳鼻咽喉科群(同56%)などの順だった。一方、入院では内科群と皮膚科群を除いた9群が黒字で、前回と同様に外来の赤字を入院が補てんする傾向が見られた。
ただ、調査に参加した187病院のうち、前回も回答しているのは45病院のため、厚生労働省では「一概に比較できない」としている。
■産婦人科群が大幅減、簡素化の影響か
部門別収支に関する調査は、レセプト調査や収支状況調査など、幾つかの段階を踏んで進んでいくが、前回最後まで参加した病院はすべて、事務スタッフの数が豊富なDPC対象病院またはDPC準備病院だった。このため、今回は職種区分の見直しのほか、高額医療機器の設置場所を把握するための「実施場所調査」の廃止など、5つの調査項目が簡素化された経緯がある。
今回の調査では、産婦人科群の入院の収支差額が前回比11ポイント減のプラス2%で大幅減となっている。厚労省が簡素化の影響について検証したところ、それ以外は前回の調査結果と同じ傾向だったため、同省では、産婦人科群に多い保険外収益の調査項目を簡素化した影響と分析している。
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