中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬調査専門組織「慢性期入院医療の包括評価分科会」(分科会長=池上直己・慶大医学部教授)は6月17日の会合で、認知症患者の状態像に応じた評価の在り方について意見を交わした。認知症患者の相当数が精神病床に入院し、長期に及ぶ入院患者も増加している状況を踏まえ、どう診療報酬に評価していくかが議論の焦点。ただ、その前提となる認知症の診断や、医療区分(入院患者の医療ニーズの高さ)とADL区分についての考え方が委員によって分かれた。
会合では、厚生労働省の精神・障害保健課の担当者が精神病床における認知症患者の位置付けなどについて説明した。精神病床の入院患者の総数は、ここ数年30万人前後で推移し、統合失調症や妄想型障害の患者が全体の半数以上の割合を占める状況は変わらないものの、アルツハイマー病や認知症の患者数が増加しつつある。また、主な傷病名が認知症の患者の約7割が精神病床に入院しているという。
さらに、同省が精神病床に入院する認知症患者について調査したデータを示し、身体能力としてできるはずのADL区分(日常生活動作の状況)と、身体介護への抵抗などを踏まえた実際のADL区分を比較すると、食事や入浴、衣服の着脱などいずれの動作においても後者の方が重くなっており、認知症特有の傾向があると説明した。
高木安雄委員(慶大大学院教授)は「ケアの時間が認知症によるものなのか判断は難しく、認知症に特化したケアをピックアップするのも非常に難しい」と指摘。これについて三上裕司委員(日本医師会常任理事)は、「介護では、認知機能の分類ではなくて手間のかかり具合で判断している」と述べた。
また池上会長は、「ケアに対する抵抗は認知能力とは直接関連しない。医療区分は認知症の診断ではなく、BPSD(問題行動)の評価尺度で測るべき」と発言。これについては「認知機能の程度とBPSD発現の頻度はパラレルではないが、BPSDの基本には認知機能の低下がかなり大きな要因になっているのは確か」(大塚宣夫委員・青梅慶友病院理事長)などの反論があがった。
猪口雄二委員(寿康会病院理事長)はこうした議論について、「全体的な考え方が見えない。認知症についてどの部分を精神疾患として対応し、そのほかをどの施設が担うのか、コンセンサスをつくりアウトラインを決めないと前に進まない」と述べた。
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