中央社会保険医療協議会(中医協、会長=遠藤久夫・学習院大経済学部教授)は3月2日の総会で、2012年度の診療報酬改定に向けた優先議題の一つとしている勤務医の負担軽減に関する議論に入った。この日は、当直明けも外来診療に携わるといった長時間の連続勤務に焦点を当てて意見を交わし、今後、勤務実態や対応策の導入状況などを調査する方針で一致した。ただ、支払側委員からは「医師不足の中では、診療報酬による誘導にも限界がある」と、改定で負担軽減を図る効果を疑問視する意見も出された。
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勤務医の負担軽減策、9つの点数に拡大
厚生労働省が示した資料(08年度「病院勤務医の負担軽減の実態調査」)によると、勤務医の平均実勤務時間は週61.3時間で、平均当直回数は月2.78回。特に、救急科や産婦人科、小児科、外科で長時間勤務や当直回数の多さが目立つ。日常業務のうち当直に対する医師の負担感は大きく、多くが当直翌日に仮眠もできないと回答している。
これらを踏まえ、厚労省は、長時間連続勤務を改善するための病院の取り組み状況などを調査することを提案。さらに、当直明け勤務の免除や交代制勤務に対する評価を論点として示した。また、病院の取り組み例として、「主治医制」で当直や深夜勤明けの休息を確保する方法と、勤務交代に伴い主治医も代わる「グループ担当医制」の方法を紹介した。
委員からは、勤務状況を含めた実態調査をできるだけ多くの医療機関を対象に行うべきだとの声が上がった。ただ、交代制勤務などに対して加算などを設けることについては、鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)が「たくさんの医師が必要で、どれだけの病院ができているか。こういうものの評価は、極めて限られた評価で終わってしまう」と懸念を示し、多くの病院で取り組めるという視点からの検討を求めた。また、嘉山孝正委員(国立がん研究センター理事長)は、「交代制にすれば、医師が足りなくなる。そうすれば、患者のアクセスを制限しなくてはならなくなることも覚悟して提案しているのか」とただした。
一方、支払側の白川修二委員(健康保険組合連合会専務理事)は、「長時間連続勤務になる理由は、簡単に言えば、医師の数が少ないからに尽きる」と指摘。「当直明け勤務免除や交代制勤務への評価に限定して何ができるのか、非常に疑問だ。中医協として診療報酬でできることは、むしろ少ないのではないか」と述べた。これに対し、坂本すが専門委員(日本看護協会副会長)は、「長時間勤務で医師がどんな薬を出したかも覚えていないといった医療事故の例もあった」と、医療安全に及ぼすリスクに言及。「中医協でどう誘導するかということはあるが、長時間勤務は何らかの形で軽減できないことはないと思う」と対策の必要性を強調した。
次回の総会では、チーム医療の推進による負担軽減や、医師以外の病院スタッフの負担などについて検討する予定。
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