中央社会保険医療協議会の会長を務める遠藤久夫・学習院大経済学部教授は2月2日、日本医師会の「医療政策シンポジウム」で講演し、たとえ増税により公費を増やしても、医療費の財源には充てられない可能性があると指摘した。
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シンポジウムでは日本福祉大の二木立教授も講演し、「社会保険料を主財源、消費税を含む租税を補助的財源として、公的医療費増加のための長期的な安定財源を確保する必要がある」と述べた。慶大商学部の権丈善一教授はシンポジウムのパネルディスカッションで、「消費税を上げれば医療費に回ってくるような話し方は、リスキーであると同時に誤解を被るので、やめた方がいい」と述べた。
講演で遠藤氏は、国民医療費が1990年代には年平均4.54%伸びていたのに対し、2000年代には伸び率が1%台にとどまっている状況を指摘。その上で、「医療に対する国民の要求水準を考えると、この問題をいつまでも放置できないと個人的には考えている」と述べ、▽公費増▽保険料引き上げ▽患者自己負担増-のいずれによって財源を確保するかは、「国民が判断するしかない」との認識を示した。
このうち公費については、「債務残高の対GDP比は世界一の水準。増税をしても債務の削減に使われることも十分に考えられる。これが社会保障費、ましてや医療費にどれぐらい跳ね返ってくるか」と疑問視した。社会保障に公費が投入されても、年金や介護など医療以外の分野が優先される可能性も指摘した。
被用者の保険料負担を引き上げて財源を確保する場合の課題には、現役世代の負担増を挙げた。また、「(1世帯当たりの平均所得が)所得水準の低い世帯の割合が増える形で下がっている。こういう中で、(患者の)自己負担を引き上げるのは難しい」とも述べた。
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