【元松阪市民病院 総合企画室 世古口 務】
■中医協資料による新型コロナ感染症の病院経営への影響
2023年11月、第567回中央社会保険医療協議会(中医協)で年度別、病院開設主体別の損益率が公表されました=表1=。
この資料では、損益率(%)=(医療・介護収益―医療・介護費用)÷医療・介護収益×100で計算されており、計算式の医療・介護収益には新型コロナ関係の補助金は含まれていません。病院開設主体別に見た、新型コロナ感染症勃発後の20年度、21年度、22年度の損益率は、20年度の医療法人の病院以外、国立病院機構の病院、公的病院、公立病院、いずれもマイナスに。さらに公立病院では他の開設主体の病院と比較して、20年度(▲21.4%)、21年度(▲19.6%)、22年度(▲19.9%)と、非常に厳しい状況です。 (残り2892字 / 全4248字) 次回(最終回)配信は3月22日5:00を予定しています
新型コロナ感染症に対する補助金を含めて計算した20年度、21年度、22年度の損益率では、医療法人の病院、国立病院機構の病院、公的病院では、いずれもプラスになっていますが、公立病院だけは、マイナスであり、大変厳しい経営状態であることが分かりました。
20年度から毎年給付されてきた新型コロナ感染症関連の補助金については、国立病院機構の病院、公的病院、公立病院には相当高額の補助金が交付されていました。特に新型コロナ感染症患者の重点医療機関では1施設当たり平均、年間で20年度に約10.3億円、21年度に約8.6億円、22年度に約7.6億円が支払われていました。23年5月より新型コロナ感染症患者のための病床確保料や診療報酬上の特例措置が見直され、23年10月からは、さらにこの特例措置が減額となりました。特例措置は24年3月31日までとなっているため、23年度の損益率は、さらに厳しい結果となることが予測されます=表2=。
医業利益率は新型コロナ禍後、いずれもマイナスです(20年度:▲6.9%、21年度:▲5.5%、22年度:▲6.7%)。新型コロナ感染症患者に対する診療報酬の特例措置による収益増、かかりまし費用などの新型コロナ感染症の影響を除けば医業利益率は、さらに0.1%程度悪化することが推測されています。さらに23年度においては、医療経済実態調査における21、22年度の収入・費用の伸び率を前提に、物価の高騰、人件費上昇を考慮すると、医業利益率はさらに悪化が予測されています。どの開設主体の病院でもですが、特に公立病院は今よりも一層、経営状況は悪化することが想定されています。
■公立病院における新型コロナ感染症の病院経営への影響
次に病院開設主体別の病院経営状況の中でも、新型コロナ禍後に一段と悪化している公立病院に特化して、23年10月に全国自治体病院協議会が公表した資料に基づき説明します。
100床あたりの22年度の平均入院医業収益では300床未満の病院では新型コロナ禍前と比較して▲0.7-▲3.1%と減少していましたが、300床以上の病院では新型コロナ禍前と比較して1.9%-3.2%の増加となっていました=グラフ1=。これには平均入院診療単価が、新型コロナ禍前と比較して病床確保料や診療報酬上の特例措置などにより、14%も増加していることが大きく影響しています。
一方、
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