【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長 、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
2024年度診療報酬改定における最大の論点の1つが増加する高齢者救急の担い手であり、誰が診るべきかが制度設計に反映されることだろう。これまでの議論を踏まえると7対1のような手厚い人員配置の急性期病院ではなく、13対1の地域包括ケア病棟で診療密度が高くない高齢者救急の対応を行うべきだという考えが根底にあるようだ。一方で現状、救急車搬送入院の多くが7対1病院で受けられているという現実を踏まえ、高度化・複雑化した今日の医療において地域包括ケア病棟では適切な診断と初期対応が難しいのではないかという意見もある=グラフ1=。
資料1は、10年と20年の救急車搬送の状況を示したものであり、高齢者救急が増加しているものの、軽症や中等症が増えていることが分かるただ、症状・兆候・診断名不明確が増加しており、合併症を有する高齢者への対応は慎重に行うべきだともいえる=資料2=。 (残り2430字 / 全3536字) 次回配信は1月29日を予定しています
さらに資料3は、7対1看護師配置である急性期一般入院料1と13対1あるいは15対1の看護師配置である地域一般入院料の疾患別の医療資源投入量の差を見たものであり、全体としては2.4倍の差があるが、誤嚥性肺炎や尿路感染のような高齢者救急では1.2倍あるいは1.4倍程度の差に収まり、必ずしも7対1病棟で重症患者を診ているわけではないことが示唆されている。資料4は横軸に急性期一般入院料1における1日当たりの資源投入量を縦軸に重症度、医療・看護必要度をとり、疾患別の状況を見たものである。ここから、高齢者救急は医療資源投入量が多くないが、重症度、医療・看護必要度は一定程度高くなっていることが示されている。この2枚のスライドは、24年度診療報酬改定を象徴する重要なメッセージを発していると私は考えている。
これに対して、重症度、医療・看護必要度ではB項目を基準から除外してはどうかという議論があり、現在実施されているシミュレーションでもB項目は削除されている=資料5=。さらに、A項目で救急車搬送あるいは救急医療管理加算等が5日間2点と評価される現状の評価から、1日、あるいは2日に短縮する案も出ている=資料6=。
救急患者の手術実施率は低く、手術なし患者の重症度、医療・看護必要度は高くない=グラフ2=。救急の評価期間を短くし、B項目を削除することは高齢者救急の担い手として、急性期病院が必ずしも適したものではないことを示唆しているのだろう。最終的な基準値次第ではあるが、現在議論されている方向で見直しが行われれば、高齢者救急を急性期病棟で受けづらくなる。
これに対して、
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】