【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長 、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
前稿で病床機能の見直しをすべき時であり、さらに戦略の一般的な定石について言及した。ただ、そのあり方について、病院単位か病棟単位かの大きく分けて2つの考え方があり、それは地域の実情により異なるのも事実である。医療政策では競争よりも協調(連携)が求められているわけだが、現実的には地域の医療機関と競争することにより、サービスの質が向上し、それが地域医療に貢献する面があるのも事実である。営利企業とは異なるものの、一定の競争は付加価値を生むことにつながる。
本稿では地域の競争状況を定量化するハーフィンダール指数(HHI)について再度紹介し、各二次医療圏の直近の状況についてデータを明らかにする(連載第4回を参照)。
HHIは、シェアの二乗和で計算され、最大が1で、ゼロに近づくほど競争が激しいことを意味する。地域に病院が1つしかなければHHIは1になるし、プレイヤーが多くなるほどゼロに近づく。さらに、同じプレイヤー数であったとしても、圧倒的なシェアを誇るプレイヤーがいるか、皆がしのぎを削って似通ったことをしているかによって当該指数は異なることになる。
シェアについては、患者数を用いてもよいが、ここでは、急性期病床の競争状況を明らかにするためにDPC算定病床を用いることとする。なお、DPC算定病床は、急性期病床のことであり、出来高算定病院における急性期病床も含まれている。患者数ではなく、病床数を用いるのは、患者数はコロナの影響もあるだろうし、何よりも病床を有していれば埋めようと躍起になり、皆がうちの病院は何床だということを強く意識しているからである。
グラフ1は二次医療圏別に横軸にDPC算定病床数を縦軸にHHIを取ったものであり、全国全ての二次医療圏がプロットされている。右下ほど競争が激しく、左上ほど寡占状態ということになる。
なお、横軸を病床数から急性期病院数に置き換えてもほぼ同じことになり、病院数は競争状況のバロメーターになることが分かる=グラフ2=。
ただ、
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次回配信は9月25日を予定しています
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