【国際医療福祉大学大学院 医療福祉経営専攻 教授 石山麗子】
介護支援専門員(以下、ケアマネジャー)が不足している。その声は日ごとに大きくなっている。少し前まで半ば愚痴まじりのエピソードが、最近では悲鳴のようだ。ケアマネジャーは、本当に不足しているのか。どこで不足しているのか。現任のケアマネジャーの実態を知ることに加え、新たななり手の確保対策を講じるには、ケアマネジャーの資格取得が可能な立場にある保健医療福祉職がケアマネジャーをどのように見ているのか知る必要もある。ケアマネジャー不足のテーマについて統計データで確認しながら考えてみよう。
厚生労働省によれば、介護支援専門員実務研修受講試験(以下、試験)の合格者の累計数は、2022年度試験をもって73万9000人に上った=グラフ1=。
一方、実働数は18万8000人である=表1=。
資格保有者数は多くても、その数が実働数の増加と比例するわけではない。それがケアマネジャーだ。つまり実務に就く予定はないが、とりあえず取得しておく資格。とはいえ、この中にケアマネジャーのなり手は含まれる。
試験の年度別合格者を見ると、18年度は 4,990 人へ激減した。背景に資格要件の変更があった。直近の22年度の合格者数は 1万328人へと倍増した。
試験の合格率をめぐっては「下がっている」と指摘する声が多いようだ。果たして、合格率は本当に低下しているのか。
2006度から22年度までの合格率を確認した。17年間の平均は18.7%、最大値23.3%(21年度)、最小値10.1%(18年度)だった。経年比較から18年度の値を見ると外れ値と解した。22年度は19.0%で平均に近い=グラフ1=。
ケアマネジャーが不足しているなら、合格率を上げればいいという意見があるかもしれない。仮に仕組みを変更せず、現状のままで合格率だけを上げる場合に何が起きるか想像しておかなければならない。当然、専門性の担保は難しくなるため、資格取得時の間口を広げると同時に従事する前後で継続的な研修を今以上に強化することなどが求められる。人の生活と人生に関わる専門職として最低限保つべき水準はどこか、という議論になる。
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