【千葉⼤学医学部附属病院 副病院⻑、病院経営管理学研究センター⻑、ちば医経塾塾⻑ 井上貴裕】
新型コロナウイルス感染症で集中治療が注目され、2022年度診療報酬改定でも14日超えや、重症患者初期支援充実加算さらに重症患者対応体制強化などのプラス評価が行われた。重症病床の重要性はメディアなどを通じて日々、広く国民にも知れ渡ることとなった。ただ、我が国のICU病床数は諸外国と比べて少なく、その効率的な利用が不可欠であることも事実である=グラフ1=。
グラフ1
出所:National Center for Biotechnology Information , Intensive Care Medicine(journal), Critical Care Medicine(Journal)
https://www.statista.com/chart/21105/number-of-critical-care-beds-per-100000-inhabitants/
連載第154回でICUの稼働率が何によって左右されるかについて取り上げた。そこでは、ICU・EICU・HCUなど複数ユニットを有する場合の組み合わせによって使い方も異なることから稼働率に影響があることを示唆した。さらにICU類型別にCoronary ICUやClosed ICUなど責任を持って管理してくれる医師がいると稼働率が上がりやすいなどの傾向も指摘した。さらに、10床以上の大きめのICUが望ましいことも提案し、これは、日本集中治療医学会からの「集中治療部設置のための指針2022年改訂版」とも整合している。そこでは、「2020年現在、日本集中治療医学会の集中治療専門医研修認定施設の95%以上は6床以上の病床を有しているが、今後新設、改築する場合には8床以上であることを推奨する」と記載されており、さらに「いくつかの小さなユニットを持つ病院では、効率を上げるためにこれらのユニットを1つの大きな部門に再編成することを推奨する」とされている。新築する場合などを除いて構造上の問題を変更することは容易ではないのだが、集中治療機能を強化する際には避けて通れない議論になることだろう。
ただし、ICU等の集中治療で本当に必要なのはヒトであり、連載第154回ではスタッフ配置については言及しておらず、濃厚なマンパワーを投入する当該治療室においてはこの点の検証が不可欠である。スペースなど構造は変えることが容易ではないが、ヒトは採用し、育て、動かすことができる。なお、日本集中治療医学会からは、1日の平均で患者1.5人に対して看護師1人以上の割合で勤務していることが推奨されており、診療報酬における基準配置以上が望ましいとされている。実際、22年度診療報酬改定で新設された理想のICUが具体化されたともいえる重症患者対応体制強化でも2対1を超える配置が求められ、看護師配置に改めて着目する必要があると考えた。
本稿では高度急性期病院として大学病院におけるICUにおける看護師配置の重要性について、全体的な傾向に触れた上で、事例を交えて言及する。なお、ICUは特定集中治療室管理料1~4、救命救急入院料2・4の2対1の看護師配置の治療室を20年度病床機能報告データから抽出している。
グラフ2は
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次回配信は7月11日5:00を予定しています
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