適切な不妊治療につなげるため、厚生労働省は19日、当事者ヒアリングを行った。参加者からは、治療に関する情報の提供や心理面も含めたサポート、相談体制の整備などを求める声が上がった。同省では、こうした意見を踏まえ、当事者に対する総合的な支援を行う方針。【松村秀士】
ヒアリングは、不妊治療を受けたり、特別養子縁組制度を活用したりした際に感じたことなどを聞くのが目的で、1回目のこの日は、当事者ら4人が参加した。
■客観的な判断ができる情報提供を
不妊体験者を支援する会「NPO法人Fine」の小宮町子氏は、体外受精も含めて約10年間受けた不妊治療を終え、夫婦2人の生活を選んだ。
小宮氏は、その期間にかけた時間や費用を無駄にしたくない、治療をやめるのが怖いとの思いから、やめる決断ができなかったと、当時を振り返った。また、もし治療前、またはその最中に、子どもを「産みたいのか」「育てたいのか」のどちらなのかを考えることができたなら、特別養子縁組制度といった選択肢もあることから、治療を長く続けることはなかったかもしれないとも語った。
その上で、「自分が受けている治療を客観的に判断し決断できれば、先の見えない不安も多少は軽減される」とし、客観的な判断につながるような情報の提供や相談体制の重要性を指摘した。
■保険適用の拡大で金額などの基準設定に期待
不妊に悩む人の自助グループ「フィンレージの会」の鈴木良子氏は、「不妊に悩む人への支援」は必ずしも「不妊治療の支援」とイコールではないと強調。当事者への心理的なサポートも重要だと訴えた。
また、当事者への調査では、不妊やその治療の情報源として役立っているものを複数挙げてもらったところ、男女とも主治医や不妊情報のサイトが多く、自治体などへの相談が最も少なかったという。
鈴木氏は、当事者の相談体制をさらに充実させる必要があるとした上で、その際は「誰が」「どこで」「どんな相談に」応じるかがポイントになると課題を提起した。
さらに、政府が目指す不妊治療への保険適用の拡大後には、経済的な負担の軽減はもちろんのこと、これまで“病院任せ”だった治療の内容や適応、金額などが精査されて何らかの基準が設けられ、それらの情報が開示されることに期待を寄せた。
■不妊症、半分近くが男性に原因
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