新型コロナウイルスの感染拡大の影響で医療機関が減収にあえぐ中、茨城県牛久市の「つくばセントラル病院」(313床)では医業収益の大幅な改善を8月以降に実現させた。回復の糸口を見いだした“秘策”とは?【兼松昭夫】
■単月1.2億円の赤字から脱却
新型コロナの感染拡大の影響で医療機関の経営悪化が止まらない。日本病院会などの調査では、全国の1,049病院の医業収入は、緊急事態宣言が発令された4月に前年同月から平均10.5%減少したことが分かった。新型コロナへの院内感染を恐れ、受診を控える動きが患者側に広がったのが原因だとされている。
茨城県内では、3月中旬に新型コロナの感染が初めて確認されると、その後に急拡大し、月末までに累計で160人超が感染した。つくばセントラル病院では、同月下旬に感染者を一時的に受け入れ、その後は感染の疑いがある患者の受け入れに対応している。
同病院は、社会医療法人「若竹会」が運営し、高度急性期から回復期機能までをカバーする地域医療支援病院。若竹会では、総合診療科を掲げる「セントラル総合クリニック」も運営し、ほかに介護老人保健施設4カ所や特別養護老人ホーム1カ所などの関連施設がある。
若竹会への影響が顕在化したのも4月だった。竹島徹理事長によると、地域全体に受診控えが広がり、「総収益がガックリ落ち込んだ」。外来では、糖尿病など生活習慣病の定期受診を中心に長期処方が進んだ上、牛久市周辺で救急車の出動件数が急減した。つくばセントラル病院とクリニックの同月の外来患者を合わせると、前の月から16.0%、前年同月からだと14.2%の減。
入院では、4月の「入院稼働率」は75.4%で、前月から6.5ポイント、前年同月比では10.9ポイントダウンした。新型コロナの感染や感染疑い症例を受け入れるため、1病棟(15床)を「特別病棟」と位置付け、個室の7床で患者を受け入れている。残り8床分のスペースは防護服の着脱などスタッフの準備用に充てたため、減収に直結した。
その上、政府の呼び掛けに応える形で、緊急性が比較的低い予定手術や入院の延期が4月以降は相次いだ。中でも白内障の手術は前年比マイナス3割超という急減ぶりだ。
病院にとって収益の柱である入院や手術件数の減少は大幅な減益をもたらした。4月の総収益は、病院とクリニックの合計で前年の75%に落ち込む半面、感染防止策の徹底などで費用が膨らんだ。この月には単月で1億2,000万円近い赤字に陥った。
■賞与は満額支給、感染防止策を徹底
ところが、若竹会の収入はその後、右肩上がりを続けている。6月以降は前年の水準をむしろ上回り、8月には単月での黒字転換を実現させた。
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