【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
診療単価と材料費比率には正の相関があり、入院・外来共に診療単価が高い病院は材料費比率(医薬品および診療材料費等)が高くなる傾向にある。診療単価は病院機能と直結するものであり、病院機能のバロメーターになる。「急性期病院らしい」と言い得る入院診療単価は6万円以上を意味すると私は考えており(連載第90回)、4万円台の入院診療単価で急性期を主張するのは難しい。
グラフ1は、入院診療単価を費目別に見たものであり、診療単価で差がつくのは手術料であることが分かる。ただ、入院診療単価のうち、手術料部分と材料費比率には強い正の相関が見られ、手術が多ければ材料、特に診療材料費が増加することになる=グラフ2=。さらに外来についても、材料費比率と診療単価には強い正の相関が見られる=グラフ3=。外来の場合には診療材料よりも医薬品費が関係するわけだが、いずれにしても急性期医療と材料費は切っても切れない関係であることが分かる。ただ、診療単価が高ければもうかるわけではないのも事実である。むしろ、収益性を重視するならば、ほどほどの入院診療単価で一定の利益を上げた方がいいという考えすら存在する。
グラフ1 入院診療単価と材料費比率(グラフの横軸は各病院)
第8回 病院経営戦略研究会資料より(以下のグラフも同様)
グラフ2 材料費比率と患者1人1日当たり手術料
グラフ3 材料費比率と外来診療単価
入院診療単価は、平均在院日数と手術に強く影響を受ける。グラフ1の手術料部分は前述した通りであり、入院料部分は平均在院日数の影響が色濃く出る。つまり、手術と平均在院日数のマネジメントが業績を左右すると言える。だとすると、徹底的に平均在院日数を短くし、手術をたくさん行うことが急性期らしいマネジメントだろう。ただ、急性期らしさを追求するとかえって赤字が膨らんでしまい、業績悪化に陥るケースも多い。平均在院日数よりも稼働率を重視し、ほどほどの入院診療単価の方が財務的にはバランスが取れることも多い。自らの立ち位置を踏まえた戦略が求められている。
本稿では、11月に公表された2019年実施の「医療経済実態調査」の病院機能別の収支状況を用いて財務状況に影響を与える要素を探り、どのような施策が業績を向上させるかに言及する。
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