【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
前回は、ICU上位加算には地域差があり、集中治療の専門医数と人口当たり特定集中治療室管理料算定件数には正の相関があるが、届け出の最大の障壁は面積要件であることに言及した。特に都市部では1床当たり20平方メートル以上の面積確保に苦労することも多く、中には大幅な改修工事をした病院もあるし、姑息な手段で少し面積を広げた病院もある。結局、Aラインを手術室で抜かなければ、「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)の基準を満たせるので、現状の施設基準を満たしたからといってICUとして適切な運営が行われているとは言い切れない。そこで今回は、2018年度診療報酬改定で特定集中治療室管理料1・2の届け出病院に義務付けられたSOFAスコアを用いて、ICUの実態に迫っていく。
SOFAスコアは、Sequential Organ Failure Assessment Scoreの略であり、呼吸機能、呼吸器、凝固系、肝機能、心血管系、中枢神経系、腎機能から構成される6つの臓器の機能不全の程度を0-4点で評価したものであり、患者の生命予後との相関が見られるものである。0点から最大24点でスコア化され、高スコア患者ほど死亡率が高くなることが予想され、ICU等の集中治療が必要な患者と考えることができる=表1=。
表1 ICUにおける生理学的指標に基づく重症度スコアの例 クリックで拡大
中央社会保険医療協議会総会(2017年11月24日)資料より
この評価が導入されDPC提出データの様式1にスコアが入力されているため、患者ごとに状態把握が可能となり、従来の看護必要度とは異なる視点からの評価が可能となった。
ここでは、特定集中治療室管理料1・2を届け出る20病院6874症例についてSOFAスコアによる分析を行った。なお、不明の場合には「9」を入力することになっているが、いずれかの項目で不明であった患者は、分析の対象からは除外している。
グラフ1は病院ごとのICU入室日当日のSOFAスコアの平均であり、最大の病院が6.5、最小が2.0であり、3倍を超える差が生じている。スコアの入力は患者個別で見ると間違いなどもあるかもしれないが、データ規模が一定になれば、それなりに信頼に足る情報として分析が可能だと一般的には考えられる。
グラフ1 ICU上位加算届け出病院 ICU入室患者の平均SOFAスコア クリックで拡大
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