【社会医療法人財団董仙会 本部情報部長 山野辺裕二】
最近のIT業界で一番ホットな話題といえば、ブロックチェーン技術です。ビットコインなどの仮想通貨の基盤として使用され、国や通貨などの枠を超えて安全に送金できる仕組みを確立したことから、社会に大きな衝撃を与えました。仮想通貨自体は幾つかの不祥事のため、やや信用を失っているようですが、ブロックチェーン技術自体に問題があるわけではありません。特定の管理者がいなくても、改ざんを検知・防止できる技術としての価値が大きく、入門書などを読むと、医療分野にも応用できるようです。
今回はこの技術の医療応用の行方について私なりに考えてみました。
ブロックチェーン技術を知るには、その前提としてピアツーピア(peer to peer)とハッシュという2つの概念を理解する必要があります。
■管理者不在でも端末のみでデータ共有するピアツーピア(P2P)技術
第1のピアツーピア(以降P2Pと略します)とは、中核となるサーバーを置かなくても、端末同士が相互に通信をしてデータの同期などを行う仕組みです。インターネットが普及するにつれ、個人レベルでのファイル共有などに便利だったことから、民間を中心に利用が広がりました。
例としては、Winnyなどのファイル共有ソフトや、テレビ電話システムのSkypeなどの名が挙がります。多くの人が使用しているマイクロソフト社のOfficeにも、かつてはGroove 2007というP2Pソフトがあり、私も企業や仕事仲間とのファイル共有に便利に使いました。このGrooveはわが国の幾つかの地域での医療連携にも使われ、成功例も目立ちました。補助金で各施設にこのソフトを購入して配布したものの、予算に比べて費用が安過ぎて説明に困ったという笑い話も出たくらいコストパフォーマンスが高い仕組みでした。ただGrooveはOffice 2013の時代に廃止され、近年はクラウド・コンピューティングに取って代わられており、P2Pのシステムはあまり見掛けません。Skypeも現在ではクラウドの仕組みで運用されています。
(残り1746字 / 全2619字)
次回配信は7月27日5:00の予定です
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】