山形県西部の酒田市では、日本海総合病院を運営する地方独立行政法人「山形県・酒田市病院機構」が中心となり、地域の医療法人や医師会、社会福祉法人も含めた地域医療連携推進法人の設立に向けて準備を進めている。
栗谷義樹理事長は、「最初は単独で生き残っていく方法を考えたが、田舎では限界がある」と考えた。社会保障財源が細っていく中、地域の医療と介護を残すためには、それぞれの医療機関が生き残る必要があると言い、大きな課題に、正面から取り組み始めている。【大戸豊】
■連携先の病院は絶対つぶれては困る
数年前、厚生労働省が米国などの事例を基に「非営利ホールディングカンパニー型法人制度」のイメージを示した際、栗谷氏は酒田市(人口約11万人)の規模でも、地域に適した形でこのような組織が実現できると考えた。
これまでは、それぞれの医療機関が患者の獲得を進めるような“消耗戦”が続いていたが、10年後には高齢者はもう増えず、若者の数は減っていき、財政的に厳しくなることは間違いない。それでは地域の医療・介護が持たないと考えていたところに、地域医療連携推進法人が選択肢に上がってきた。
法人を運営していく上での大きな問題は、医療機関同士が集まり、機能分化を進めれば、利害が対立して「割を食う」所が出てきてしまうことだ。
例えば、高度医療機器を一個所に集約すれば、設備投資は抑えられても、他の病院の患者が減ったり、既に投資している分を回収できなくなったりする所も出てくる可能性がある。しかし、都市部より人口減少が先に進む田舎では、医療提供体制も“過疎地仕様”に変えていくことは必須で、数十年先の姿を見据える必要があった。
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