【浪速区医師会副会長 えびす診療所院長 久保田泰弘】
医療分野における番号制度は、日本医師会の意向により、プライバシー保護などの観点からマイナンバーとは別に「医療等ID」を設け、共通診察カードを利用する形になるようだ。
現時点でも、SNSを利用した“フロー型情報網”のシステムが全国各地で広がりつつあるほか、病院主導でクラウド型の電子カルテが構築され、異なるネットワーク間での情報共有が進みつつある。ただ、大阪のような大都市では病院や診療所の数も多く、コストの問題などもあるため、総務省のインターネットエクスチェンジ(IX)※1の導入をきっかけに、情報共有が広がることも期待される。
※1 医療用ネットワークには、専用回線と同程度のセキュリティーの確保が欠かせないが、全国でさまざまなネットワークが運用されているのが現状だ。全国レベルの医療用ネットワークを構築するには、既存のネットワークを相互接続することが現実的だと言えるが、その場合、暗号方式やデータフォーマットなどが異なるため、IXを構築することが現実的と考えられる。総務省では現在、医療分野におけるIXの実証事業を進めており、2017年度中に終了する予定。
■Aケアカードは病状急変時や看取りなどを想定
このような状況で、患者にとって有益な情報共有をどうすればできるかという観点から、浪速区医師会では「Aケアカードシステム」を考案した。
介護保険サービスの利用者はもともと、医療機関ともつながっている。特に在宅患者は訪問看護や薬剤師、歯科医師の世話になることもしばしばだ。
医師、多職種に患者が依存する場面を考えると(1)病状急変時(2)治療や介護などが継続して必要になり、多職種連携の頻度が増える時(3)看取り-が挙げられる。Aケアカードシステムでは、このような場面で活用しやすい仕組みを考えた。
(1)病状急変時には、入院、施設入所の可能性が高く、地域の病診連携のための基盤が必要となる
(2)多職種連携の頻度が増える際には、日々の病診連携に加え、さらに多職種連携が必要となる
(3)看取りの際には、家族・本人に状況を十分説明しつつ、その方向性を多職種で共有することが重要になる
こうした場面で特に円滑に対応できることを目標にAケアカードシステムの運用は16年11月にスタートした。
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