2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、厚生労働省は昨年秋、医療機関の敷地内を全面禁煙とする受動喫煙防止策の強化案(たたき台)を示した。その後、政府の作業部会が行った意見聴取では、日本医師会(日医)などの職能団体が同省案に賛意を示したのに対し、病院団体からは慎重な対応を求める声が上がった。医療界で意見がまとまらないのはなぜなのか―。その背景を探った。【敦賀陽平】
昨年12月中旬、地域がん診療連携拠点病院の指定を受けている徳島県立中央病院(徳島市)で、全面禁煙としている敷地内で職員29人による喫煙が発覚。同病院の現職幹部ら12人が懲戒処分となった。内部調査の結果、院長自らが敷地内で喫煙し、職員の行動を黙認していたことも分かり、業界内に波紋が広がった。
これに先立ち、鳥取県では8月下旬、禁煙外来を設置する済生会江津総合病院(江津市)で、職員が敷地内で喫煙していることが判明し、診療報酬を返還する事態にまで発展した。
現行の診療報酬では、乳幼児や妊婦に関連する項目などで禁煙の要件が盛り込まれている。だが、その多くは「屋内禁煙」(建物内禁煙)である上、緩和ケア病棟と精神病棟に限り(一部を除く)、分煙が認められている =表= 。
鳥取の病院では、「ニコチン依存症管理料」以外は屋内禁煙が要件となっていたが、病院側は「襟を正す意味で、屋内の禁煙に関しても、すべて返還することを決めた」という。
一方、徳島県立中央病院は05年4月から、敷地内の全面禁煙を独自で実施。同病院では、「総合入院体制加算2」や「呼吸ケアチーム加算」などを届け出ていたものの、内部調査の結果、建物内での喫煙が確認されなかったため、診療報酬の返還には至らなかった。
■度重なる違反に罰則適用も
日本医療機能評価機構が行っている「病院機能評価」では、受動禁煙対策も審査の対象となっている。同機構によると、4日現在、認定を受けている病院の数は2184施設に上り、病院全体の約4分の1を占めるが、評価の基準は屋内禁煙(緩和ケア病棟と精神病棟を除く)を基本としている。
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